研究開発

【1】脳腫瘍

【a.】 蛍光顕微鏡・蛍光内視鏡による悪性脳腫瘍の手術 悪性脳腫瘍の手術における蛍光ガイド下脳腫瘍摘出術は、血液脳関門の破壊された悪性脳腫瘍に蛍光色素が集積する性質を利用して、正常脳組織との境界が不鮮明な腫瘍を低侵襲かつ効率的に摘出します。
その際に用いる光学系機器、腫瘍親和性物質、内視鏡などをさらに改良を加え更なる低侵襲手術法を新たに開発中です。
【b.】 脳腫瘍に対する遺伝子治療 無秩序な増殖を繰り返す悪性腫瘍内で特異的に複製し、腫瘍細胞のみを破壊するウイルスベクターを作成しており、これらを用いた悪性グリオーマに対する遺伝子治療の臨床応用を目指しています。
【c.】 血管新生因子の実験的検討 ヒト悪性脳腫瘍の培養株を樹立し、これが分泌している成長因子について検討しています。特に、血管新生への関与を検討することにより、悪性脳腫瘍に対する最先端医療の開発を目指しています。
【d.】 悪性脳腫瘍に対する免疫化学療法 悪性脳腫瘍患者の免疫機能を評価し、放射線、抗がん剤、インターフェロンを組み合わせた新しい免疫化学療法の効果を検討しています。
【e.】 脳腫瘍に対する定位的放射線治療 Xナイフは効果・安全性が高く、悪性脳腫瘍を始めとして脳動静脈奇形、三叉神経痛など種々の疾患に対する低侵襲な治療法です。我々は、定位放射線治療を用いた種々の臨床検討を行っています。
【f.】脳腫瘍に対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT, Boron Neutron Capture Therapy) 悪性脳腫瘍に対する硼素中性子捕捉療法、特に熱外中性子を利用した非開頭治療法を開発中です。
また硼素中性子捕捉療法に使用する硼素薬剤の細胞内取り込みを腫瘍選択的に増加させる併用薬剤の開発研究も行っています。
【g.】 脳機能の画像診断・脳機能マッピング 脳腫瘍を低侵襲かつ効率的に除去するために種々の先端的手法が開発されています。
我々は、腫瘍診断法として MRS (Magnetic Resonance Spectroscopy)、IMP・TaliumによるSPECT、アミノ酸PET、局在評価法としてSAS (Surface Anatomical Scanning)、Navigation system、SEP (Sensory Evoked Potential)、アミタールテストなどを駆使し、治療成績を更に改善すべく検討しています。
【h.】 脳腫瘍(神経内視鏡手術)におけるバーチャルリアリティ画像を用いたシミュレーション 脳腫瘍手術では周囲の正常構造や神経組織と腫瘍の位置関係を立体的に把握することが、摘安全でかつ最大限の摘出に極めて重要です。特に神経内視鏡手術は2次元画像下での手術であるため習熟が必要です。
術前術中検討だけでなく手術教育に応用できる術前2次元画像から術野を立体的に予測するためのバーチャルリアリティ画像構築システムを開発しています。
【i.】 脳腫瘍の免疫組織学的検討 脳腫瘍組織切片を用い、細胞増殖能、癌遺伝子変異やエピゲノム変化(特に治療効果予測因子)の検索を行っています。
【j.】 脳腫瘍幹細胞を標的化する放射線増感治療法 生体アミノ酸の一種であるアミノレブリン酸を用いて悪性脳腫瘍に内在するX線治療抵抗性の高い「がん幹細胞」を標的化する放射線増感治療法の開発研究を本学放射線治療部と共同で行っています。
【k.】 放射線脳壊死に対する治療 放射線治療は脳腫瘍に対して有効な治療方法ですが、病状によっては複数回の放射線治療を行うことがあります。その場合、放射線治療の副作用として正常脳が損傷する放射線障害、「放射線脳壊死」が生じることがあります。
難治性の放射線脳壊死には血管新生阻害薬であるアバスチン®が有効なことがあり、その臨床研究を行っています。また放射線脳壊死の病態解明のために基礎研究も行っています。

【2】脳血管障害

【a.】 パイプラインフレックスの基礎実験とその臨床研究 Flow Diverter(以下FD)は従来の血管内治療と異なり、動脈瘤内にカテーテルを誘導しコイルなどの塞栓物質を充填することなく動脈瘤に流入する血行を制御することにより、動脈瘤の破裂や増大を防ぎつつ母血管を温存するという画期的なもので、特に神経圧迫症状の改善効果が高いことが報告されています。



一方、治療前から治療後にかけて、有効な抗血栓療法が必須であり、機器の取り扱いにも相当の習熟を要する上、出血および血栓症など短期・中期間の成績や評価が定まっておらず、自然歴や従来の治療法との優劣は明らかになっていません。

本邦では2012年12月からFDの1つであるパイプライン(コビィディエン/メドトロニクス社)の治験が行われ、デリバリーシステムが改良されたパイプラインフレックスが2015年4月に薬事承認され、それを受け現在施設および術者限定でパイプラインフレックス留置術が行われています。

当院でも2015年6月より現在までに計30名を超える患者さまに対してパイプラインフレックス留置術を施行してきており良好な成績を認めています。
現在パイプライン留置後に希釈造影剤を用いたCone Beam CTを撮影しパイプラインの血管密着を確認し、その後6ヵ月後の脳動脈瘤閉塞率との関係などを検討しています。

【b.】 3D-立体画像の血管内治療における診断と治療方針決定への応用 脳血管内治療を行う上で、 3-dimensional(3-D)再構成画像は必須です。従来の3-D 再構成画像は濃淡や影のつけ方により奥行きや丸みを表現してきましたが、これらはモニター上に投影された平面画像にすぎません。

脳血管内治療では立体視による動脈瘤の形状、分枝の状況、シャント部位の確認や血流連絡などの解剖学的把握が必要であり、さらには治療用カテーテルのshapingなどにも応用することが可能です。

当教室では脳血管内治療前に3-D立体視画像を作成し術前シミュレーションを行い、 3-D立体視画像の有用性を報告してきました(JNET 2016; 10: 291-296)。現在実際の臨床応用を目指しさらなる研究を行っています。
【c.】 血管撮影装置および画像のバーチャルリアリティによる操作 操作パネルのボタン操作、モニター上の画像の操作を空中で行えるようなバーチャル操作パネルを開発中です。
【d.】 INVOSを用いたCAS患者の治療および予後の評価 ステント留置前後のINVOSの値の変化をパターン化し、虚血症状、過灌流発生を予測するなどの評価を検討しています。
【e.】 血栓回収療法におけるデバイスごとの費用対効果の検討 stent retrieverとPenumbraまたは両者の併用における治療効果、コスト、DPCの有無について比較検討する。
【f.】 特発性頭蓋内圧亢進症に対するsinusplastyの有用性 うっ血乳頭を呈するIIHに対する静脈洞の拡張による効果の確認を行っています。
【g.】 髄膜腫に対するNBCAを用いた塞栓術の有用性 低濃度NBCAを腫瘍内までpenetrateさせる塞栓術の効果を検討しています。
【h.】 Protégé ステント留置における内反変形について 内反変形とは鋭く突出した石灰化病変でステントを展開した時にステントが内側へ折れ返る現象で、すでに当教室では実験的に証明済みであります。
これが臨床において起こる頻度、石灰化病変の度合いなどを検討しています。
【i.】 血管薬理・脳血管れん縮の機構解明 独創的な血管反応装置を使用して、脳血管の反応や脳血管攣縮の機構を解明しています。
最近では、動脈硬化血管におけるくも膜下出血後の脳血管攣縮に平滑筋増殖が関与するという仮説の下、動脈硬化血管を用いて攣縮程度の形態学的および薬理学的変化を検討しています。
【j.】 脳血流モデル研究 現在、脳動脈瘤に対してクリッピング術、血管内コイル塞栓術が一般に行われているが、手術成績を向上すべく術前・後の脳動脈瘤近傍(動脈瘤部、血管分岐・合流部、バイパス血管部)の血流動態を解析することは非常に重要です。
我々は、生体で検討困難なこれらの病態に流体モデルを用いて検討しています。

【3】意識障害

中枢神経救急疾患に対する急性期意識障害分類JCS (Japan Coma Scale)を国際的な基準とすべく、現在、多施設間で共同研究が行われています。また、NIRS (Nearinfrared spectroscopy)を用いて、植物症(慢性期意識障害)の病態評価とともに、意識、認識のメカニズムを解明すべく検討しています。さらに、脊髄後索電気刺激や脳深部刺激による意識障害治療を試みています。

【4】水頭症

【a.】 理想的なシャントシステムの開発 脳室-腹腔シャントシステムにおける髄液流量調節バルブの特性を測定し、理想的なシャントシステムについて検討しています。
【b.】 特発性水頭症の診断基準の作成と治療指針 特発性水頭症の術前検査方法を考案し、術後のシャントシステムの圧設定を理想的に行えるよう検討しています。
【c.】 特発性正常圧水頭症の正確な画像診断法の確立
【d.】 特発性正常圧水頭症の低侵襲手術法の開発

【5】神経再生

bFGF、Bcl-xL発現組み替えアデノウイルスを用いた神経再生遺伝子治療を実験的に試みています。

【6】電気生理学的モニタリング

聴性脳幹誘発反応(ABR)、体性感覚誘発電位(SEP)、皮質脳波(EcoG)、その他の電気生理学的検査法を用いて病態や術中の脳機能を把握すべく検討しています。

【7】顕微鏡下手術における手術機器の考案

種々手術機器を考案し、手術に応用しています。

【8】神経放射線診断

CT、3D-CTA(CTアンギオ)、MRI、MRA(MRアンギオ)により3次元立体画像を作成し、脳ドックシステムの検討を行っています。

【9】5-アミノレブリン酸による片頭痛の予防研究

現在大阪医科大学脳神経外科では「5-アミノレブリン酸による片頭痛の予防におけるランダム化二重盲検クロスオーバー試験」という臨床試験を行っています。片頭痛にお悩みの方の臨床試験のご参加を広く募集しております。(pdf)