教授 池田恒彦
大阪医科大学眼科学教室では,臨床だけでなく基礎研究にも力を入れています。研究内容 は,将来臨床に貢献できる可能性のあるテーマを選び,大学院生を中心に,国内あるいは 海外の施設とも積極的に共同研究を行っています。共同研究施設としては,米国ミシガン 大学,大阪医大薬理学教室,大阪医大生理学教室,大阪医大病態検査学教室,京都府立医 大内科学教室,岐阜薬科大学などがあります。研究領域としては,網膜硝子体,緑内障, 眼循環,神経眼科,電気生理,角膜,ぶどう膜,視機能などがあり,奥英弘診療准教授, 小嶌祥太講師,喜田照代講師,杉山哲也非常勤講師,中村公俊非常勤講師を中心に多くの プロジェクトを立ち上げています(最近の教室における文部科学省科学研究費の採択課題→ここをクリック)。研究成果は,多くの英文雑誌に発表し,常に国際的にアピールすることを目的としています。
代表的な研究内容は以下のごとくです。
ミュラー細胞と網膜硝子体疾患に関する研究(→クリック
Endothelinと眼疾患の関連(→クリック
緑内障と眼血流に関する研究(→クリック
アルツハイマー病(AD)と緑内障の関連(→クリック
キマーゼ阻害薬の緑内障手術への応用(→クリック
硝子体のプロテオーム解析(→クリック
実験的ぶどう膜炎の発症機序に関する研究(→クリック
網膜神経節細胞の神経保護と軸索再生に関する研究(→クリック
加齢黄斑変性の病態に関する研究(→クリック
P2X7受容体と眼疾患の関連(→クリック
高血糖・インスリンと眼循環(→クリック
網膜微小血管における電気生理学的研究(→クリック
眼科学教室単独で所持している研究施設としては,電気生理研究室,病理組織研究室,生化学研究室,動物実験室などがあり,共同利用施設である大学研究機構研究室も頻回に使用し,最新の分子・細胞生物学的手法を駆使しながら研究を行っています。
   
  研究協力のお願い
   特発性眼窩炎症と眼窩蜂窩織炎の炎症反応比較→ここをクリック
   大阪医科大学附属病院における糖尿病眼筋麻痺を対象とした病態解析と複視に対する治療法の検討→ここをクリック
   
 
:: 奥診療准教授からのひとこと ::
研究と臨床の両立は、困難であるという意見があります。しかし将来臨床に還元できる可能性のある研究を一度やってみると臨床医としての視野が必ず広がります。個人的な研究の話になりますが、エンドセリンー1という血管収縮ペプチドを家兎の硝子体中に注射し経過をみていると、1ヶ月ほど経って視神経乳頭陥凹が拡大しているのが偶然見つかりました。また一酸化窒素(NO)発生化合物を同様に家兎の硝子体中に注射すると、視細胞を中心に強い障害がみられました。当時NOの網膜障害は明らかにされていませんでしたので、非常に乱暴な実験でしたが良いjournalに受理されました。研究と臨床の両立はいろいろとたいへんなことが多いのも事実ですが、紹介したような思いがけない結果との出会いは、わくわくしますし、やりがいがあると考えています。当教室では研究志向がある先生方を大歓迎します。  
   
 
:: 杉山非常勤講師からのひとこと ::
病態が十分解明されていない眼疾患や、より安全で効果的な治療法の開発が望まれている眼疾患は少なくありません。例えば失明原因の上位にある緑内障を取り上げても、その治療法は未だ十分確立されているとはいえません。当教室では、基礎医学の教室と共同研究を進める一方、独自で開発・推進している技術(血流測定・電気生理など)を駆使し、難治疾患の病態解明や治療法の開発に取り組んでおります。やる気さえあれば国際的に通用する研究に携われますし、希望されるなら海外留学の機会もあります。当教室で眼科研究の面白さに触れてみませんか。基礎研究で培った問題解決能力は、眼科臨床医としての仕事を続けていく上でも大いに役立つことと思います。  
   
 
:: 喜田講師からひとこと ::
当教室では、網膜や視神経、緑内障、角膜などの基礎研究や臨床研究を行っています。私は網膜静脈閉塞症や糖尿病黄斑浮腫などの網膜疾患に興味があり診療させて頂いていますので、眼循環を中心に、実験はうまくいかないことも少なくありませんが、網膜の培養細胞や摘出血管を用いて基礎研究を行っています。私は2005年の春、渡米した留学先のPh.D.のボスに、「研究は楽ではない。特に基礎研究は8割以上がうまくいかないものだ。頑張れないなら帰りなさい。」と最初に言われました。当時は勢いで出て来てしまったものの考えが甘かったと早々に帰国しようか本当に困惑したのを記憶していますが、今はその言葉が、実験で失敗を繰り返したときの私の心の支えになっています。研究をしているといろいろな先生方と交流する機会もおのずとでき、視野も広がると思います。
大学院生の先生をはじめ、若い頃にいろいろと興味や疑問を持つことや失敗を恐れずチャレンジすることは大切です。結果はどうであれ、心にゆとりを持ちながら楽しんで臨床だけでなく研究もできれば最高で、その気になれば当教室ではそれが可能だと思います。もちろん、私達スタッフもお手伝いしたいと思っています。声をかけてください。
 
   
 
  ミュラー細胞と網膜硝子体疾患に関する研究
       
      感覚網膜に存在するグリア細胞には,ミュラー細胞,アストロサイト,ミクログリアがある。このうちミュラー細胞は網膜のほぼ全域に分布し,内境界膜から視細胞領域までの広範囲をカバーする細胞で,ニューロンが互いにシナプスを形成しながら3つの大きな層状構造を形成しているのに対して,ただ一つの細胞体のみでこの全域を覆っている(図1)。ミュラー細胞には網膜の支持組織としての機能だけでなく,最近の分子生物学の進歩などにより下記のような多彩な機能を有することが解明されてきている。
1) 変性網膜の修復機能
2) 神経細胞を標的とする神経栄養因子の分泌機能
3) 血管新生作用
4) 神経伝達物質の代謝
      我々の教室では過去に,ミシガン大学眼科,京都府立医大第一内科,大阪医大薬理学教室,岐阜薬科大学,参天製薬との共同研究も含めて,培養ミュラー細胞を用いて,同細胞における種々のサイトカインの発現(図2)および種々の生理活性物質のミュラー細胞への影響を検討してきた(図3)。最近では中心窩の未分化なグリア細胞が網膜幹細胞としての作用を有するのではないかという仮説のもとに,特発性黄斑円孔や特発性黄斑上膜などの黄斑疾患の病態解明をすすめている(図4)
       
     

図2 培養ミュラー細胞におけるBDNF mRNAの発現(文献6から引用)
図1 ミュラー細胞の構造
注)M:ミュラー細胞,G:神経節細胞,B:双極細胞,H:水平細胞,Am:アマクリン細胞,R:rod C:cone
 
   
図3 ミュラー細胞とニューロンの相互作用
血液網膜関門の破綻により硝子体腔に漏出する細胞増殖因子などがミュラー細胞の増殖を促進させるだけでなく,ミュラー細胞自身も種々のサイトカインを産生し,血管新生や神経保護に作用しているものと考えられる。
   
図4 サル眼黄斑部におけるNestin発現(文献1から引用)
   
       
      過去の業績
       
      1)Inokuchi N, Ikeda T, Nakamura K, Morishita S, Fukumoto M, Kida T, Oku H. Vitreous estrogen levels in patients with an idiopathic macular hole. Clinical Ophthalmology 2015;9:549-52.

2)Nakaizumi A, Fukumoto M, Kida T, Suzuki H, Morishita S, Satou T, Oku H, Ikeda T, Nakamura K. Measurement of serum and vitreous concentrations of anti-type U collagen antibody in diabetic retinopathy. Clinical Ophthalmology 2015;9:543-7.

3)Ikeda T, Nakamura K, Oku H, Morishita S, Fukumoto M, Suzuki H, Kida T, Horie T, Sugiyama T, Takai S. The role of tryptase and anti-type U collagen antibodies in the pathogenesis of idiopathic epiretinal membranes. Clin Ophthalmol 2015;9:1181-6.

4)Kida T, Oku H, Horie T, Matsuo J, Kobayashi T, Fukumoto M, Ikeda T. NADPH Oxidase-Mediated ROS Production Determines Insulin's Action on the Retinal Microvasculature. IOVS 2015;56(11):6754-61.

5)Shibata M, Ikeda T, Nakamura K, Kakurai K, Morishita S, Fukumoto M, Kida T, Horie T, Oku H. Expression Sites of Neural Stem Cell-Related Genes in the Monkey Retina. J Stem Cell Res Ther 2015;5(12).

6)Sugiyama T, Katsumura K, Nakamura K, Kobayashi M, Muramatsu M, Maruichi M, Oku H, Takai S, Miyazaki M, Ikeda T.:Effects of chymase on the macular region in monkeys and porcine muller cells: probable involvement of chymase in the onset of idiopathic macular holes. Ophthalmic Res. 2006;38(4):201-8.

7)Hirase K, Sugiyama T, Ikeda T, Sotozono C, Yasuhara T, Koizumi K, Kinoshita S.:Transforming growth factor beta increases in subretinal fluid in rhegmatogenous retinal detachment with subretinal strands. Ophthalmologica. 2005 Jul-Aug;219 (4): 222-5.

8)Ikeda T.:The pathogenesis of vitreoretinal diseases from the standpoint of molecular biology.Nippon Ganka Gakkai Zasshi. 2003 Dec;107(12):785-812.

9)Nakamura N, Hasegawa G, Obayashi H, Yamazaki M, Ogata M, Nakano K, Yoshikawa T, Watanabe A, Kinoshita S, Fujinami A, Ohta M, Imamura Y, Ikeda T.:Increased concentration of pentosidine, an advanced glycation end product, and interleukin-6 in the vitreous of patients with proliferative diabetic retinopathy. Diabetes Res Clin Pract. 2003 Aug;61(2):93-101.

10)Kida T, Ikeda T, Nishimura M, Sugiyama T, Imamura Y, Sotozono C, Nishida K, Kinoshita S, Yoshimura M, Nakamura K, Inokuchi N:Renin-angiotensin system in proliferative diabetic retinopathy and its gene expression in cultured human muller cells. Jpn J Ophthalmol. 2003 Jan-Feb;47(1):36-41.

11)Oku H, Ikeda T, Honma Y, Sotozono C, Nishida K, Nakamura Y, Kida T, Kinoshita S.:Gene expression of neurotrophins and their high-affinity Trk receptors in cultured human Muller cells. Ophthalmic Res. 2002 Jan-Feb;34(1):38-42.

12)Inokuchi N, Ikeda T, Imamura Y, Sotozono C, Kinoshita S, Uchihori Y, Nakamura K.:Vitreous levels of insulin-like growth factor-I in patients with proliferative diabetic retinopathy. Curr Eye Res. 2001 Nov;23(5):368-71.

13)Yoshida S, Sotozono C, Ikeda T, Kinoshita S.:Interleukin-6 (IL-6) production by cytokine-stimulated human Muller cells. Curr Eye Res. 2001 May;22(5):341-7.

14)Ikeda T, Homma Y, Nisida K, Hirase K, Sotozono C, Kinoshita S, Puro DG.:Expression of transforming growth factor-beta s and their receptors by human retinal glial cells. Curr Eye Res. 1998 May;17(5):546-50.

15)Hirase K, Ikeda T, Sotozono C, Nishida K, Sawa H, Kinoshita:Transforming growth factor beta2 in the vitreous in proliferative diabetic retinopathy. Arch Ophthalmol. 1998 Jun;116(6):738-41.

16)Hirata C, Nakano K, Nakamura N, Kitagawa Y, Shigeta H, Hasegawa G, Ogata M, Ikeda T, Sawa H, Nakamura K, Ienaga K, Obayashi H, Kondo M.:Advanced glycation end products induce expression of vascular endothelial growth factor by retinal Muller cells. Biochem Biophys Res Commun. 1997 Jul 30;236(3):712-5.

17)Ikeda T, Waldbillig RJ, Puro DG.:Truncation of IGF-I yields two mitogens for retinal Muller glial cells. Brain Res. 1995 Jul 17;686(1):87-92.

18)Ikeda T, Puro DG.:Regulation of retinal glial cell proliferation by antiproliferative molecules. Exp Eye Res. 1995 Apr;60(4):435-43.

19)Ikeda T, Puro DG.:Nerve growth factor: a mitogenic signal for retinal Muller glial cells.Brain Res. 1994 Jun 27;649(1-2):260-4.
 
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  Endothelinと眼疾患の関連
       
      endothelin (ET)は21のアミノ酸からなりET-1、 ET-2、ET-3の異性体が存在する。ET-1は血管内皮細胞から分泌され、最も強力な血管収縮ペプチドである。血管系に対する作用に加え、網膜や視神経を含む中枢神経系にはETを介したシグナル伝達系が存在し、ETは神経ペプチドとして機能し神経変性に深く関与している。ET-1と緑内障の関連を示唆する報告として以下のようなものがあげられる
1. ET-1の硝子体内あるいは球後視神経への投与により、網膜神経節細胞の減少、乳頭陥凹の拡大など、緑内障性視神経症に類似した病態を作成することができる (図1)
2. 正常眼圧緑内障や、進行性の緑内障では血中ET-1濃度が有意に高値である
3. 緑内障でETA受容体遺伝子多型の関与が認められる
4. 実験的緑内障や視神経挫滅モデルの網膜で、ET およびETB受容体の増加がみられる(図2)
5. microarrayによる網膜内遺伝子変化の網羅的解析で、ET-2とETB受容体の発現亢進が有意に認められる
      本学眼科では、endothelinの発見当初からその作用に注目し、一酸化窒素(NO)合成系との関連を含め、視神経乳頭循環障害、網膜神経細胞に対するアポトーシス作用、酸化ストレスなど、様々な面からendothelinの作用を検討し、眼疾患、特に緑内障性視神経症、糖尿病網膜症との関連について研究している。
      脳病態時にendothelinはastrocyteを活性化し、astrogliosisを惹起する。この過程でastrocyteはmacrophage/microgliaなどの遊走細胞とendothelinやcytokineを介したネットワークを形成し、炎症反応を介して神経・軸索傷害を助長する。この現象は視神経疾患で一般的に生じていると考えられ、グリア細胞の活性化を制御することで、新たな治療につながる可能性が考えられる。
       
     
図1 ET-1による家兎の視神経乳頭陥凹拡大
投与前(左)に比べET-1投与8週後(右)には、矢印で示す血管の位置が陥凹に近づき、陥凹が拡大しているのがわかる。文献13より引用。
   
図2 視神経軸索傷害モデルによる網膜内ET-1, ETB受容体発現の亢進(免疫組織科学)
視神経挫滅(crush)により、網膜神経線維層、網膜神経節細胞層を中心にET-1の発現が亢進している。文献1より引用。
   
       
      関連論文
       
      1)Nakaizumi A, Horie T, Kida T, Kurimoto T, Sugiyama T, Ikeda T, Oku H. Nitric oxide potentiates TNF-α-induced neurotoxicity through suppression of NF-κB. Cell Mol Neurobiol. 2012;32(1):95-106.

2)Dibas A, Oku H, Fukuhara M, Kurimoto T, Ikeda T, Patil RV, Sharif NA, Yorio T. Changes in ocular aquaporin expression following optic nerve crush. Mol Vis. 2010;16:330-40.

3)Sato T, Oku H, Tsuruma K, Katsumura K, Shimazawa M, Hara H, Sugiyama T, Ikeda T. Effect of hypoxia on susceptibility of RGC-5 cells to nitric oxide. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010;51(5):2575-86 .

4)Matsuo J, Oku H, Kanbara Y, Kobayashi T, Sugiyama T, Ikeda T. Involvement of NADPH oxidase and protein kinase C in endothelin-1-induced superoxide production in retinal microvessels. Exp Eye Res. 2009;89(5):693-9.

5)Oku H, Fukuhara M, Kurimoto T, Okuno T, Sugiyama T, Ikeda T. Endothelin-1 (ET-1) is increased in rat retina after crushing optic nerve. Curr Eye Res. 2008 ;33(7):611-20.

6)Oku H, Fukuhara M, Komori A, Okuno T, Sugiyama T, Ikeda T. Endothelin-1 (ET-1) causes death of retinal neurons through activation of nitric oxide synthase (NOS) and production of superoxide anion. Exp Eye Res. 2008;86(1):118-30.

7)Nagano H, Wei PZ, Wen CQ, Jomori T, Oku H, Ikeda T, Saito Y, Tano Y. Effects of kallidinogenase on ischemic changes induced by repeated intravitreal injections of endothelin-1 in rabbit retina. Curr Eye Res. 2007;32(2):113-22.

8)Kida T, Sugiyama T, Oku H, Harino S, Ikeda T. Plasma endothelin-1 levels depress optic nerve head circulation detected during the glucose tolerance test. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2007;245(9):1289-93.

9)Kobayashi T, Oku H, Fukuhara M, Kojima S, Komori A, Ichikawa M, Katsumura K, Kobayashi M, Sugiyama T, Ikeda T. Endothelin-1 enhances glutamate-induced retinal cell death, possibly through ETA receptors. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005;46(12):4684-90.

10)Konno T, Maruichi M, Takai S, Oku H, Sugiyama T, Uchibori T, Nagai A, Kogi K, Ikeda T, Miyazaki M. Effect of chymase on intraocular pressure in rabbits. Eur J Pharmacol. 2005 7;524(1-3):132-7.

11)Hara H, Ichikawa M, Oku H, Shimazawa M, Araie M. Bunazosin, a selective alpha1-adrenoceptor antagonist, as an anti-glaucoma drug: effects on ocular circulation and retinal neuronal damage. Cardiovasc Drug Rev. 2005;23(1):43-56.

12)Goto W, Oku H, Okuno T, Sugiyama T, Ikeda T. Amelioration of endothelin-1-induced optic nerve head ischemia by topical bunazosin. Curr Eye Res. 2005;30(2):81-91.

13)Okuno T, Oku H, Sugiyama T, Goto W, Ikeda T. Evaluation of nitric oxide synthesis in the optic nerve head in vivo using microdialysis and high-performance liquid chromatography and its interaction with endothelin-1. Ophthalmic Res. 2003;35(2):78-83.

14)Kawamura H, Oku H, Li Q, Sakagami K, Puro DG. Endothelin-induced changes in the physiology of retinal pericytes. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43(3):882-8.

15)Oku H, Kida T, Sugiyama T, Hamada J, Sato B, Ikeda T. Possible involvement of endothelin-1 and nitric oxide in the pathogenesis of proliferative diabetic retinopathy. Retina. 2001;21(6):647-51.

16)Oku H, Sugiyama T, Kojima S, Watanabe T, Ikeda T. Improving effects of topical administration of iganidipine, a new calcium channel blocker, on the impaired visual evoked potential after endothelin-1 injection into the vitreous body of rabbits. Curr Eye Res. 2000;20(2):101-8.

17)Oku H, Sugiyama T, Kojima S, Watanabe T, Azuma I. Experimental optic cup enlargement caused by endothelin-1-induced chronic optic nerve head ischemia. Surv Ophthalmol. 1999;44 Suppl 1:S74-84.

18)Ota M, Oku H. Nicardipine modification of endothelin-1 effects on visual evoked potential. Jpn J Ophthalmol. 1997;41(1):38-42.

19)Sugiyama T, Moriya S, Oku H, Azuma I. Association of endothelin-1 with normal tension glaucoma: clinical and fundamental studies. Surv Ophthalmol. 1995;39 Suppl 1:S49-56.

20)Oku H, Sugiyama T, Moriya S, Hamada J, Azuma I. Effects of intravitreal injection of endothelin on the visual system. Nippon Ganka Gakkai Zasshi. 1993;97(4):467-73.

21)Kobayashi T, Oku H, Komori A, Okuno T, Kojima S, Obayashi H, Sugiyama T, Hasegawa G, Fukui M, Nakamura N, Ikeda T. Advanced glycation end products induce death of retinal neurons via activation of nitric oxide synthase. Exp Eye Res. 2005;81(6):647-54.

22)Goto W, Oku H, Okuno T, Sugiyama T, Ikeda T. Amelioration by topical bunazosin hydrochloride of the impairment in ocular blood flow caused by nitric oxide synthase inhibition in rabbits. J Ocul Pharmacol Ther. 2003 Feb;19(1):63-73.

23)Oku H, Yamaguchi H, Sugiyama T, Kojima S, Ota M, Azuma I. Retinal toxicity of nitric oxide released by administration of a nitric oxide donor in the albino rabbit. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1997;38(12):2540-4.
 
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  緑内障と眼血流に関する研究
       
      緑内障診療ガイドラインによると、現在、緑内障に対する唯一確立された治療は眼圧下降であるが、視神経乳頭の血流改善治療や神経保護治療も将来革新的な治療法となる可能性があると記載されている。
我々の教室では従来から、緑内障、特に正常眼圧緑内障(NTG)の眼血流について、臨床的・基礎的な検討を行って報告して来た。臨床的には、蛍光眼底造影法、レーザースペックル法、超音波カラードップラ法を用いて、基礎的には水素クリアランス法、熱電対法、レーザースペックル法を用いて検討してきた。その結果、NTGにおける眼血流、特に視神経乳頭血流の病態への関与、視神経乳頭血流の自動調節機構に関する知見、緑内障治療薬の眼血流への影響などを報告して来た。これらの中には九州工業大学、東京大学、慶応大学、タフツ大学、大阪医科大学麻酔科、鐘紡研究所、千寿製薬研究所、大塚製薬研究所などとの共同研究が含まれている。
例えば、我が国で開発された非侵襲的な血流測定法であるレーザースペックルフローグラフィ(図1)による視神経乳頭血流測定を水素クリアランス法で検証し、その定量性を明らかにしたこと、視交叉部の電気刺激により視神経乳頭の出血さらには陥凹拡大を生じ、NTGのモデルとなる可能性があること、NTGの視神経乳頭血流日内変動、特に夜間の低下が視野障害進行と関連していること、同じ非選択的β遮断点眼薬でもNTGの視神経乳頭血流に対する作用が異なること(図2)などを報告している。最近では視神経乳頭血流自動調節能が破綻する一因として高コレステロール血症があることを実験的に証明した。
     
     
図1 レーザースペックルフローグラフィ(左)と得られたカラーマップの例(右)
   
図2 正常眼圧緑内障(NTG)患者における視神経乳頭血流の変化(典型例)。L:ラタノプロスト、T:チモロール、C:カルテオロール。数値は組織血流量の指標であるSBR値。L+T、L+Cそれぞれの点眼を3ヶ月継続後、乳頭辺縁部(□の部)の組織血流量は後者で有意に増加している。文献2から改変引用。
   
       
      過去の業績
       
      1)Sugiyama T, Shibata M, Kojima S, Ikeda T. Optic nerve head blood flow in glaucoma. "The Mystery of Glaucoma" (edited by Kubena T & Kofronova M) pp147-170, InTech, 2011.

2)Shibata M, Sugiyama T, Hoshiga M, Hotchi J, Okuno T, Oku H, Hanafusa T, Ikeda T. Changes in optic nerve head blood flow, visual function, and retinal histology in hypercholesterolemic rabbits. Exp Eye Res. 2011;93(6):818-24.

3)Shibata M, Oku H, Sugiyama T, Kobayashi T, Tsujimoto M, Okuno T, Ikeda T. Disruption of gap junctions may be involved in impairment of autoregulation Invest Ophthalmol Vis Sci. 2011;52(5):2153-9.

4)杉山哲也、柴田真帆、小嶌祥太、植木麻理、池田恒彦.タフルプロスト点眼による原発開放隅角緑内障眼の視神経乳頭血流変化. 臨眼2011;65(4):475-9.

5)Sugiyama T, Shibata M, Kajiura S, Okuno T, Tonari M, Oku H, Ikeda T. Effects of fasudil, a Rho-associated protein kinase inhibitor, on optic nerve head blood flow in rabbits. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2011;52(2):64-9.

6)Sugiyama T, Araie M, Riva CE, Schmetterer L, Orgul S: Use of laser speckle flowgraphy in ocular blood flow research. Acta Ophthalmol 2010;88(7):723-9.

7)Sugiyama T, Kojima S, Ishida O, Ikeda T: Changes in optic nerve head blood flow induced by the combined therapy of latanoprost and beta-blockers Acta Ophthalmol 2009; 87(7):797−800.

8)Sugiyama T, Mashima Y, Yoshioka Y, Oku H, Ikeda T: Effect of unoprostone on topographic and blood flow changes in the ischemic optic nerve head of rabbits. Arch Ophthalmol. 2009;127(4):454-9.

9)杉山哲也、小嶌祥太、植木麻理、廣辻徳彦、池田恒彦、河内 明、酒井雅人、南 敏明: 星状神経節照射の緑内障に対する効果の検討.臨眼2006;60(13): 2041-5.

10)Okuno T, Sugiyama T, Kohyama M, Oku H, Kojima S, Ikeda T: Ocular blood flow changes after dynamic exercise in humans. Eye 2006;20(7): 796-800.

11)Okuno T, Sugiyama T, Kojima S, Nakajima M, Ikeda T: Diurnal variation in microcirculation of ocular fundus and visual field change in normal-tension glaucoma. Eye 2004;18(7):697-702.

12)Nakanishi M, Sugiyama T, Nakajima M, Ikeda T: Changes in orbital hemodynamics induced by nipradilol in healthy volunteers. J Ocular Pharmacol. Ther 2004;20(1):25-33.

13)杉山哲也: レーザースペックル法を用いた視神経乳頭循環測定の基礎と臨床.眼紀2002;53(11):685-9.

14)Okuno T, Oku H, Sugiyama T, Yang Y, Ikeda T: Evidence that nitric oxide is involved in autoregulation in optic nerve head of rabbits. Invest Ophthalmol Vis Sci 2002;43(3): 784-9.

15)Makimoto Y, Sugiyama T, Kojima S, Azuma I: Long-term effect of topically applied isopropyl unoprostone on microcirculaton in the human ocular fundus. Jpn J Ophthalmol 2002;46(1):31-5.

16)Sugiyama T, Hara H, Oku H, Nakatsuji S, Okuno T, Sasaoka M, Ota T, Ikeda T: Optic cup enlargement followed by reduced optic nerve head circulation after optic nerve stimulation. Invest Ophthalmol Vis Sci 2001;42(12):2843-8.

17)Kida T, Sugiyama T, Harino S, Kitanishi K, Ikeda T: The effect of nipradilol, an alpha-beta blocker, on retinal blood flow in healthy volunteers. Curr Eye Res 2001;23(2):128-32.

18)Waki M, Sugiyama T, Watanabe N, Ogawa T, Shirahase H, Azuma I: Effect of topically applied iganidipine dihydrochloride, a novel calcium antagonist, on optic nerve head circulation in rabbits. Jpn J Ophthalmol 2001;45(1):76-83.

19)Toriu N, Shimazawa M, Sasaoka M, Hara H, Sugiyama T: Effects of lomerizine, a novel Ca2+ channel blocker, on the normal and endothelin-1-disturbed circulation in the optic nerve head of rabbits. J Ocular Pharmacol Ther 2001;17(2):131-49.

20)Sugiyama T, Oku H, Ikari S, Ikeda T: Effect of nitric oxide synthase inhibitor on optic nerve head circulation in conscious rabbits. Invest Ophthalmol Vis Sci 2000;41(5):1149-52.

21)Sugiyama T, Schwartz B, Takamoto T, Azuma I: Evaluation of the circulation in the retina, peripapillary choroid and optic nerve head in normal tension glaucoma. Ophthalmic Res 2000;32(2-3):79-86.

22)Sugiyama T, Azuma I, Araie M, Fujisawa S, Urashima H, Nagasawa M: Effect of continuous intravenous infusion of carteolol chloride on tissue blood flow in rabbit optic nerve head. Jpn J Ophthalmol 1999;43(6):490-4.

23)Tomita K, Araie M, Tamaki Y, Nagahara M, Sugiyama T: Effects of nilvadipine, a calcium antagonist, on rabbit ocular circulation and optic nerve head circulation in NTG subjects. Invest Ophthalmol Vis Sci 1999;40(6):1144-51.

24)Shimazawa M, Sugiyama T, Azuma I, Araie M, Iwakura Y, Watari M, Sakai T, Hara H: Effect of lomerizine, a new Ca2+ channel blocker, on the microcirculation in the optic nerve head in conscious rabbits: a study using a laser speckle technique. Exp Eye Res 1999;69(2):185-93.

25)Sugiyama T, Utsumi T, Azuma I, Fujii H: Measurement of optic nerve head circulation: comparison of laser speckle and hydrogen clearance methods. Jpn J Ophthalmol 1996;40(3):339-43.

26)Sugiyama T, Azuma I: Effect of UF-021 on optic nerve head circulation in rabbits. Jpn J Ophthalmol 1995;39(2):124-9.
 
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  アルツハイマー病(AD)と緑内障の関連
       
      緑内障、殊に正常眼圧緑内障(NTG)では眼圧が重要な因子であることは共通しているものの、他のさまざまな因子が関わった多因子疾患であるという考えが認められつつある。その中で、ADをはじめとする神経変性疾患との共通性が一部の緑内障患者で認められるという報告が国内外で散見されるようになってきている。我々の教室でも最近、NTGとADとの関連を脳血流の観点から検証し、さらにAD治療薬のNTGへの効果を検討した。パイロットスタディではあるが、AD治療薬のNTGに対する効果を確認し、報告した。
       
       
      過去の業績
       
      1)Yoshida Y, Sugiyama T, Utsunomiya K, Ogura Y, Ikeda T. A pilot study for the effects of donepezil therapy on cerebral and optic nerve head blood flow, visual field defect in normal-tension glaucoma. J Ocul Pharmacol Ther. 2010;26(2):187-92.

2)吉田由紀子、杉山哲也、池田恒彦、宇都宮啓太、小倉康晴、楢林 勇.正常眼圧緑内障に対する塩酸ドネペジルの効果.臨眼2007;61(8):1437-41.

3)Sugiyama T, Utsunomiya K, Ota H, Ogura Y, Narabayashi I, Ikeda T: Comparative study of cerebral blood flow in patients with normal-tension glaucoma and control subjects. Am J Ophthalmol 2006;141(2):394-6.
 
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  キマーゼ阻害薬の緑内障手術への応用
       
      現在、緑内障手術の主流は線維柱帯切除術であり、術後成績はマイトマイシンC(MMC)の併用により格段に改善したが、一方で、MMCの組織毒性に起因すると思われる濾過胞漏出、濾過胞炎などの合併症の比率が高くなっている。そこで、MMCより組織毒性が少なく、かつ術後瘢痕抑制作用のある新しい薬剤の臨床応用が望まれている。我々の教室は大阪医科大学薬理学教室と共同でキマーゼ阻害薬の緑内障術後瘢痕抑制への応用を検討しており、さらに最近では京都大学再生医科学研究所と共同でゼラチンハイドロゲルを応用した新しいDrug delivery systemの開発を検討し、動物実験での成果を報告している。
       
       
      過去の業績
       
      1)Kojima S, Sugiyama T, Takai S, Jin D, Shibata M, Oku H, Tabata Y, Ikeda T. Effects of Gelatin Hydrogel Containing Chymase Inhibitor on Scarring in a Canine Filtration Surgery model. IOVS 2011;52(10):7672-80.

2)Konno T, Maruichi M, Takai S, Oku H, Sugiyama T, Uchibori T, Nagai A, Kogi K, Ikeda T, Miyazaki M: Effect of chymase on intraocular pressure in rabbits. Eur J Pharmacol 2005;524(1-3):132-7.

3)Maruichi M, Takai S, Sugiyama T, Ueki M, Oku H, Sakaguchi M, Okamoto Y, Muramatsu M, Ikeda T, Miyazaki M: Role of chymase on growth of cultured canine Tenon's capsule fibroblasts and scarring in canine conjunctival flap model. Exp Eye Res 2004;79(1):111-8.

4)Sakaguchi H, Takai S, Sakaguchi M, Sugiyama T, Ishihara T, Yao Y, Miyazaki M, Ikeda T: Chymase and angiotensin converting enzyme activities in a hamster model of glaucoma filtering surgery. Curr Eye Res 2002;24(5):325-31.
 
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  硝子体のプロテオーム解析
       
      当教室では大阪医大病態検査学教室との共同研究で,世界に先駆けて硝子体のプロテオーム解析を行っている。プロテオーム(proteome) とは蛋白質(protein)とゲノム(genome)を合わせた造語であり,ある生物の遺伝情報に基づいて生産された蛋白質(protein)の集合体を意味する。 異なる二つの状態(細胞や組織)の蛋白質の発現パターンを解析・比較することで,発現に差のある蛋白質を同定し,疾患の病態を解明しようとするもので,我々は以前より眼内血管新生性疾患の代表である増殖糖尿病網膜症と,非増殖性疾患の代表である特発性黄斑円孔の硝子体を用いて解析を行っている。その結果,各疾患で特異的に発現している,いくつかの蛋白を同定することができた。今後はその蛋白の機能を解明し疾患の病態とのかかわりを検討する予定である。
       
     
図1 黄斑円孔硝子体サンプルのプロテオーム解析(文献1から引用)
   
図2 増殖糖尿病網膜症硝子体サンプルのプロテオーム解析(文献1から引用)
   
       
      関連文献
       
      1)Nakanishi T, Koyama R, Ikeda T, Shimisu A:Catalogue of soluble proteins in the human vitreous humor:comparison between diabetic retinopathy and macular hole. Journal of Chromatography B 776: 89-100, 2002.

2)Koyama R, Nakanishi T, Ikeda T, Shimizu A:Catalogue of soluble proteins in human vitreous humor by one-dimensional sodium dodecy1 sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis and electrophoresis and electrospray ionization mass spectrometry including seven angiogenesis-regulating factors. J Chiromatography B 792: 5-21,2003.

3)Mukai N, Nakanishi T, Shimizu A, Takubo T, Ikeda T:Identification of phosphortyrosyl proreins in vitreous humors of patients with vitreoretinal diseases by sodium dodecyl-sulfate polyacrylamide gel electrophoresis/western blotting/matrix- assisted desorption time-of-flight mass spectrometry. Ann Clin Biochem. 2008 May;45(Pt 3):307-12.
 
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  実験的ぶどう膜炎の発症機序に関する研究
       
      ヒトぶどう膜炎の動物モデルとして確立されたのが実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimental autoimmune uveoretinitis:EAU)であり、網膜自己抗原であるInterphotorecepter retinoid binding protein(以下、IRBP)に感受性のあるマウスで誘導することができる。IRBPは視細胞外節と網膜色素上皮細胞間での視物質構成成分であるレチノイドの移動における担体として機能している。過去の研究から、EAUはTh1細胞依存性疾患であることが判明しているが、マクロファージが組織傷害に重要であるという報告もあり、EAU発症部位における標的細胞および傷害細胞は議論があり明確には同定されていない。我々はマウスにEAUを発症させ組織学的・生化学的に傷害部位を同定し、標的細胞と傷害細胞をマウス網膜から単離した細胞を用いて明らかにした。その結果,早期にミクログリアのようなMac-1+単核細胞が光受容体細胞である視細胞層へ集積し、Th1細胞によって活性化されTNF-αやNOを放出することにより視細胞内節を特異的かつ非貪食的に破壊したと考えた。その後、内節の傷害により細胞維持に必須である脂肪酸等の供給が減少すること等により、視細胞外節やRPEの構造破壊がおこり、それをマクロファージが特異的に貪食し、網膜構造が破壊されると考えた。ミクログリアによる視細胞内節の特異的、非貪食的破壊とマクロファージによる外節と網膜色素上皮の特異的貪食機構は今後解明されるべき課題と考えられる。
       
     
図1 EAUモデル(文献1より引用)
   
図2 EAU早期にみられるMac-1+単核細胞(文献1より引用)
   
       
      関連文献
       
      1)Miura-Takeda S, Tashiro-Yamaji J, Oku H, Takahashi T, Shimizu T, Sugiyama T, Ikeda T, Kubota T, Yoshida R.: Experimental autoimmune uveoretinitis initiated by non-phagocytic destruction of inner segments of photoreceptor cells by Mac-1(+) mononuclear cells.  Microbiol Immunol. 2008 Dec;52(12):601-10.
 
   
   
 
  網膜神経節細胞の神経保護と軸索再生に関する研究
       
      外傷、虚血性視神経症、緑内障などの視神経疾患では、従来の治療に抵抗し視機能予後の不良な難治症例が依然多く存在する。このような症例に対する治療戦略の一つとして、網膜神経節細胞自体の生存を強力に維持させる神経保護療法の開発が強く望まれている。当教室では、in vivo, vitroの両面から、新たに神経保護効果が期待し得る薬物(シロスタゾール、ピログルタミン酸、アドレナリン作動薬、P2受容体拮抗薬、エンドセリン受容体拮抗薬など)、経角膜電気刺激、眼炎症に伴う活性化マクロファージなどの炎症性細胞による保護効果やその作用機序を検討している。さらに、損傷視神経の再生による視機能回復を目指し、主にラット、マウスの視神経損傷モデルを用いて、様々な軸索再生促進因子の併用による相乗効果を検討している。
       
     
図:Zymosanによる眼炎症とcAMPアナログ、mTOR経路活性化の併用による視神経再生(マウス視神経、挫滅後2週目)
多数のGAP-43陽性線維が挫滅創を乗り越え、中枢側へ伸展している。一部の再生線維は視交叉付近まで到達している。*印挫滅創(文献1より改変引用)
   
       
      過去の業績
       
      1)Kurimoto T, Yin Y, Omura K, Gilbert H, Cen LP, Moko L, Kugler S, Benowitz LI. Long-distance axon regeneration in the mature optic nerve: Contributions of Oncomodulin, cAMP and pten gene deletion. J Neurosci 2010;30(46):15654-15663.

2)Okamoto N, Ito Y, Nagai N, Murao T, Takiguchi Y, Kurimoto T, Mimura O.Preparation of ophthalmic formulations containing cilostazol as an anti-glaucoma agent and improvement in its permeability through the rabbit cornea. J Oleo Sci 2010;59(8):423-30.

3)Oono S, Kurimoto T, Nakazawa T, Miyoshi T, Okamoto N, Kashimoto R, Tagami Y, Ito Y, Mimura O. Pyroglutamic acid promotes survival of retinal ganglion cells after optic nerve injury. Curr Eye Res 2009;34(7):598-605.

4)Tagami Y, Kurimoto T, Miyoshi T, Morimoto T, Sawai H, Mimura O. Axonal regeneration induced by repetitive electrical stimulation of crushed optic nerve in adult rats. Jpn J Ophthalmol 2009; 53(3):257-266.

5)Kashimoto R, Kurimoto T, Miyoshi T, Okamoto N, Tagami Y, Oono S, Ito Y, Mimura O. Cilostazol promotes survival of axotomized retinal ganglion cells in adult rats. Neurosci Lett 2008;436(2):116-119.

6)Kurimoto T, Ishi M, Tagami Y, Nishimura M, Miyoshi T, Tsukamoto Y, Mimura O. Xylazine promotes axonal regeneration in the crushed optic nerve of adult rats. Neuroreport 2006;17(14):1525-1529.

7)Miyoshi T. Kurimoto T. Fukuda Y. Attempts to restore visual function after optic nerve damage in adult mammals. Adv Exp Med Biol 2006; 557:133-47.

8)Kurimoto T, Miyoshi T. Suzuki A. Yakura T. Watanabe M. Mimura O. Fukuda Y., Apoptotic death of beta cells after optic nerve transection in adult cats. J Neurosci 2003; 23(10):4023-4028.
 
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  加齢黄斑変性の病態に関する研究
       
      加齢黄斑変性は,種々の酸化ストレスや動脈硬化が発症に関与していることが指摘されている。我々は,加齢黄斑変性患者で低比重リポ蛋白(LDL)の代謝に関与するparaoxonase(PON)遺伝子を解析し,2か所の遺伝子多型があることを発見した(図1)。また,同患者の血清では酸化LDL, PON活性および細胞外superoxide dismutase (EC-SOD) の血中濃度が,有意に上昇していることを見出した(図2,3)。さらに,加齢黄斑変性患者では血清中の肺炎クラミジア抗体価がIgA, IgGともに高値であった。加齢黄斑変性では,PON遺伝子多型による遺伝的素因,酸化LDLの増加およびEC-SODの機能不全による血管障害,肺炎クラミジアによる慢性炎症などが病態に関与している可能性が推定された。
       
     
図1 加齢黄斑変性患者におけるparaoxonase(PON)遺伝子多型の解析結果
加齢黄斑変性患者と対照でPON 内の2か所の遺伝子多型 (BBおよびLL) の分布に統計学的に有意差がみられた(p=0.0127, p=0.009)。
図2 加齢黄斑変性患者の血清中酸化LDL 濃度およびPON 活性.
酸化LDL 濃度およびPON 活性ともコントロ−ルと比較して加齢黄斑変性患者では有意に高値であった(p<0.05, p<0.01)。
図3 加齢黄斑変性患者の血清EC-SOD濃度.
加齢黄斑変性群では対照群に比較して血清EC-SOD濃度が高値を呈した。
図4 加齢黄斑変性患者血清中の肺炎クラミジア抗体値.
IgG index ,IgA index とも加齢黄斑変性群が対照群よりも有意に高値であった。
   
       
      過去の業績
       
      1)Is Chlamydia pneumoniae infection a risk factor for age related macular degeneration?
Ishida O, Oku H, Ikeda T, Nishimura M, Kawagoe K, Nakamura K.
Br J Ophthalmol. 2003 May;87(5):523-4.

2)Paraoxonase gene polymorphisms and plasma oxidized low-density lipoprotein level as possible risk factors for exudative age-related macular degeneration.
Ikeda T, Obayashi H, Hasegawa G, Nakamura N, Yoshikawa T, Imamura Y, Koizumi K, Kinoshita S.
Am J Ophthalmol. 2001 Aug;132(2):191-5.

3)Pars plana vitrectomy for regression of choroidal neovascularization with age-related macular degeneration.
Ikeda T, Sawa H, Koizumi K, Yasuhara T, Yamasaki T.
Acta Ophthalmol Scand. 2000 Aug;78(4):460-4.

4)A novel relation of fatty acid with age-related macular degeneration.
Ouchi M, Ikeda T, Nakamura K, Harino S, Kinoshita S.
Ophthalmologica. 2002 Sep-Oct;216(5):363-7.
 
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  P2X7受容体と眼疾患の関連
       
      細胞外ATPと関連物質(アデノシンなど)が種々の生理作用(例えば血流調節など)を発揮していることがわかってきた。また、ATPなどの受容体はプリン受容体と呼ばれ、P1受容体、P2受容体に大別されるが、各々が多くのサブタイプから成ることが明らかにされている。そのうちP2X7受容体は最近、細胞死、炎症、疼痛、神経変性、虚血性疾患、睡眠など医学の多くの領域で注目されるようになった。教室とミシガン大学(Puro教授)との共同研究によって、P2X7受容体が網膜血流調節のみならず、網膜微小血管の細胞死に関わっていること、特に糖尿病ラットの場合は正常眼では作用しない低濃度のP2X7受容体刺激薬によってアポトーシスが惹起されることを見出し、その機序についても知見を得た。さらにP2X7受容体の活性化による網膜循環障害が糖尿病網膜症の初期変化に関わっている可能性を実験的に示した。また、培養ラット網膜神経細胞を用いた実験により、虚血(低酸素)による網膜神経細胞死にP2X7受容体の活性化が関与していることを報告した。ラット視神経挫滅モデル、緑内障モデルなどにおける本受容体の関与についても現在、検討中である。
       
      過去の業績
       
      1)Kawamura H, Sugiyama T, Wu DM, Kobayashi M, Yamanishi S, Katsumura K, Puro DG. ATP: a vasoactive signal in the pericyte-containing microvasculature of the rat retina. J Physiol. 2003;551(3):787-99.

2)Sugiyama T, Kobayashi M, Kawamura H, Li Q, Puro DG. Enhancement of P2X7-induced pore formation and apoptosis: an early effect of diabetes on the retinal microvasculature. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2004;45(3):1026-32.

3)Sugiyama T, Kawamura H, Yamanishi S, Kobayashi M, Katsumura K, Puro DG. Regulation of P2X7-induced pore formation and cell death in pericyte-containing retinal microvessels. Am J Physiol Cell Physiol. 2005;288(3): C568-76.

4)Sugiyama T, Oku H, Komori A, Ikeda T. Effect of P2X7 receptor activation on the retinal blood velocity of diabetic rabbits. Arch Ophthalmol. 2006;124(8):1143-49.

5)Sugiyama T, Oku H, Shibata M, Fukuhara M, Yoshida H, Ikeda T. Involvement of P2X7 receptors in the hypoxia-induced death of rat retinal neurons. Invest Ophthalmol Vis Sci 2010;51(6):3236-43.
 
図:P2X7受容体刺激薬(BzATP)によって惹起されるラット網膜微小血管細胞死への糖尿病の影響。(A)糖尿病罹患4週間後のラット(Diabetic)では1μMという正常ラット(Non-diabetic)では細胞死を起こさない低濃度のBzATPでも著明な細胞死を生じる。(B)糖尿病罹患後2週間で、この脆弱性が惹起される(*:罹病期間0すなわち正常に比べてp<0.001, ns:有意差なし)。文献2より引用。
   
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  高血糖・インスリンと眼循環
       
       眼循環においては著しい高血糖状態が一過性に網膜血流量を増加させる可能性が示唆されているが、視神経乳頭循環などの自動調節機構が働く(文献1)とされる眼内微小循環の変化についての定量的な報告はみられない。そこで、臨床的に重要と思われる200〜300 mg/dlレベルの高血糖状態における視神経乳頭循環の変化をレ−ザ−スペックル法を用いて検討し、血管内皮作動因子である一酸化窒素(NO)およびインスリンとの関連についてin vivoで検討した(図1-1, 2)。その結果、ブドウ糖負荷が眼灌流圧に無関係に、有意に視神経乳頭血流を増大させることが明らかになった。この増加がL-NAME (NO合成酵素(NOS)阻害剤)の投与で完全に抑制されたことから、この増加はNOSを介したものであると考えられた。しかし視神経乳頭血流の増大はインスリン投与群が一過性であったのに対し、ブドウ糖負荷による増大は持続的であった。したがってブドウ糖負荷では副交感神経系やある種のサイトカインなど、インスリンを介したNOS刺激以外の要因の関与も考えられる。現在、in vitro研究として、摘出網膜血管や培養細胞を用いて分子レベルでの機構解析を行っている(図2-1)。
 また、これらに関連した臨床研究として、糖負荷時における血中エンドセリン-1(ET-1)の視神経乳頭血流に対する影響についても検討した。その結果、糖尿病患者では糖負荷による血流増加が抑制され、その要因の一つにET-1の関与が考えられた(文献3, 6, 7)。
 以上より、NOやET-1など網膜・視神経乳頭の自動調節能に関与する血管内皮由来因子の変化が、網膜血管や網膜自体の組織障害を引き起こし、糖尿病網膜症に代表されるインスリン抵抗性疾患の発症や、血管透過性亢進の原因として働いている可能性が考えられる。今後、糖尿病網膜症に対してこのような観点からの研究も必要であると思われる。
       
      過去の業績
       
      1)Kida T, Liu JH, Weinreb RN. Effect of aging on nocturnal blood flow in the optic nerve head and macula in healthy human eyes. J Glaucoma 17(5):366-71, 2008.

2)Kida T, Liu JH, Weinreb RN. Effects of aging on corneal biomechanical properties and their impact on 24-hour measurement of intraocular pressure. Am J Ophthalmol 146(4):567-572, 2008.

3)Kida T, Sugiyama T, Oku H, Harino S, Ikeda T. Plasma endothelin-1 levels depress optic nerve head circulation detected during the glucose tolerance test. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(9):1289-93, 2007.

4)Kida T, Liu JH, Weinreb RN. Effect of 24-hour corneal biomechanical changes on intraocular pressure measurement. Invest Ophthalmol Vis Sci 47(10):4422-6, 2006.

5)Kida T, Ikeda T, Nishimura M, Sugiyama T, Imamura Y, Sotozono C, Nishida K, Kinoshita S, Yoshimura M, Nakamura K, Inokuchi N. Renin-angiotensin system in proliferative diabetic retinopathy and its gene expression in cultured human muller cells. Jpn J Ophthalmol 47(1):36-41, 2003.

6)Kida T, Harino S, Sugiyama T, Kitanishi K, Iwahashi Y, Ikeda T. Change in retinal arterial blood flow in the contralateral eye of retinal vein occlusion during glucose tolerance test. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 240(5):342-7, 2002.

7)Oku H, Kida T, Sugiyama T, Hamada J, Sato B, Ikeda T. Possible involvement of endothelin-1 and nitric oxide in the pathogenesis of proliferative diabetic retinopathy. Retina 21(6):647-651, 2001.

8)Kida T, Sugiyama T, Harino S, Kitanishi K, Ikeda T. The effect of nipradilol, an alpha-beta blocker, on retinal blood flow in healthy volunteers. Curr Eye Res 23(2):128-32, 2001.

9)Kida T, Oku H, Sugiyama T, Ikeda T. The mechanism and change in the optic nerve head (ONH) circulation in rabbits after glucose loading. Curr Eye Res 22(2):95-101, 2001.
 
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  網膜微小血管における電気生理学的研究
       
       我々の教室はミシガン大学ケロッグアイセンターのDonald G. Puro博士と共同で、tissue print methodで採取したラット網膜血管を用いて主に電気生理学的手法で網膜微小循環についての研究を行っている。
 網膜虚血時には網膜血管の中でも毛細血管が特に脆弱である事は以前から知られているが、その詳細な機序については明らかになっていない。我々は、これまでにラット網膜毛細血管における周皮細胞間にみられるgap junctionの機能は様々な生理活性物質により制御されており、糖尿病ラットでは早期から傷害される事を実験的に明らかにしてきた。また、ATP感受性Kチャネルの局在が網膜血管の中でも毛細血管に集中する事を見出した。さらに、KATPチャネルは網膜虚血や酸化ストレスが加わると活性化され、結果的に周皮細胞内のCa2+濃度上昇を経て細胞傷害性に作用するという経路を明らかにしてきた。網膜毛細血管に分布する周皮細胞内には細胞収縮能を有する蛋白質が存在し網膜血液循環の自己調節に深く関与しているが、これまでに様々な血管作動性因子により周皮細胞が収縮もしくは弛緩する事で網膜微小循環の調節に関与していることを明らかにしてきた。特に網膜虚血環境下では毛細血管の周皮細胞は収縮する傾向にあり、網膜虚血をさらに悪化させるということがわかっている。このほか、糖尿病患者の硝子体中でVEGF濃度が上昇することは以前より知られているが、我々の教室ではVEGFに暴露されたラット網膜血管では細胞間を伝導する電流の伝導率が著しく低下するという事を実験的に示してきた。現在は周皮細胞におけるP2X7受容体活性化による細胞膜Pore形成と細胞死についての研究を主に行っている。
       
     
写真1
A(正常ラット網膜毛細血管)
ニューロバイオチンを毛細血管周皮細胞に注入すると、gap junctionを介して隣接した周皮細胞に拡散する。
B(ET-1に暴露された網膜毛細血管)
Gap junctionの機能が障害されニューロバイオチンの拡散がみられない。
(文献1より引用)

写真2
網膜虚血時のKATPチャネルの活性化を介した毛細血管微小循環障害の経路
(文献4より引用)
       
      過去の業績
       
      1) Oku H, Kodama T, Sakagami K and Puro DG: Diabetes-induced disruption of gap junction pathways within the retinal microvasculature. Invest Ophthalmol Vis Sci 42:1915-19, 2001.

2)Kobayashi T and Puro DG: Loss of insulin-mediated vasoprotection: early effect of diabetes on pericyte-containing microvessels of the retina. Investigative Ophthalmology & Visual Science, 48: 2350-2355, 2007.

3)Ishizaki E, Fukumoto M and Puro DG: Functional KATP channels in the rat retinal microvasculature: topographical distribution, redox regulation, spermine modulation and diabetic alteration. Journal of Physiology, 587:2233-2253, 2009.

4)Nakaizumi A and Puro DG: Vulnerability of the retinal microvasculature to hypoxia: role of polyamine-regulated KATP channels. Investigative Ophthalmology & Visual Science, 52:9345-9352, 2011.

5)Nakaizumi A, Zhang T and Puro DG: The electrotonic architecture of the retinal microvasculature: diabetes-induced alteration. Neurochem Int 2012;61(6):948-53.

6)Fukumoto M, Nakaizumi A, Zhang T, Lentz SI and Puro DG: Vulnerability of the retinal microvasculature to oxidative stress: ion-channel-dependent mechanisms. Am J Physiol Cell Physiol. 2012;302(9):C1413-20.
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