ご挨拶
血液・腫瘍

1960年代、小児白血病や重症再生不良性貧血などの血液疾患、小児固形がんは不治の病とされていました。しかし、わずか50年の間に医学は進歩し続け、現在ではこれらの難治性疾患が次々と克服されるようになってきました。頻度は少ないながら、常に一定の頻度で発生する難病のこどもたちに最適で安全な医療を提供すること、一人ひとりを大切に診療し次の患者さまに資する知見を積み重ねてゆくことを胸に日々診療を続けています。

血液・腫瘍グループでは、白血病・リンパ腫を含む各種血液疾患および関連各科との連携により固形腫瘍全般と、小児血液腫瘍領域すべての疾患についての診療を行っています。
治療に関しては、現行で実施されている最新の治療研究に属し、患者さまに最適な治療を提供できるように努めています。
また当院血液内科と共に日本骨髄バンク、臍帯血バンクの移植認定施設となっており、定期的な合同カンファレンスを開催しながら移植医療に取り組んでいます。

診療内容
  1. 白血病・悪性リンパ腫:日本小児白血病・リンパ腫研究グループ(JPLSG,CCLSG)の各治療研究に参加しています。
  2. 固形がん:骨軟部肉腫(JRSG)、脳腫瘍(JPBTC)、神経芽腫(JNSBG)、肝芽腫(JPLT)、腎芽腫(JWiTs)、ランゲルハンス細胞組織球症(JLSG)の各治療研究に参加しています。
  3. 血液疾患:再生不良性貧血(小児再不貧研究会)、骨髄異形成症候群(小児血液学会MDS委員会)の治療研究に参加しています。
  4. 造血幹細胞移植:日本骨髄バンク・臍帯血バンクの施設認定を受けており、血縁・非血縁造血幹細胞移植を行っています。また日本骨髄移植推進財団より、移植コーディネートと骨髄採取を委託されています。
  5. その他:先天性骨髄不全症候群、血小板減少性紫斑病、血友病、赤血球膜異常症、血小板機能異常症、原発性免疫不全症、血球貪食症候群、好中球減少症などの治療を行っています。

外来通院で行う抗がん剤治療については、2006年9月から外来化学療法センター(病院2号館3階)を利用し、専任の医師、看護師、薬剤師が携わることで、より安全・快適な環境での治療を受けて頂けるようになっています。

診療実績
  1. 新規長期入院患者数:年18人
    急性リンパ性白血病6人、急性骨髄性白血病1人、悪性リンパ腫4人、脳腫瘍3人、再生不良性貧血・骨髄異形成症候群4人
  2. 短期入院:年20人
    血小板減少性紫斑病、他(赤血球異常症、ランゲルハンス細胞組織球症、血球貪食症候群、良性腫瘍、免疫不全症、治療後晩期障害精査など)
  3. 外来患者数:のべ年500人
    白血病、悪性リンパ腫、固形がん、再生不良性貧血、血小板減少性紫斑病、血友病、免疫不全症、好中球減少症など
  4. 造血幹細胞移植:年3件 (自家末梢血幹細胞移植1件、同種末梢血幹細胞移植2件)
  5. 外来化学療法センターの利用件数:のべ年240人
    急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫
  6. 検査:骨髄検査 年65件、骨髄生検 年15件
  7. 処置:髄腔内注射 年90件、中心静脈カテーテル留置術 年20件
スケジュール
 
午前
小児科外来
担当医:瀧谷
小児科外来
担当医:瀧谷
午後 小児科外来
(予約制)

担当医:河上、井上
化学療法
センター
(予約制)

担当医:井上
おもなスタッフ

井上 彰子
(いのうえ あきこ)

平成7年 大阪医科大学卒業 講師(准) 医学博士

資格・専門医など:
日本小児科学会小児科専門医、日本血液学会血液専門医・血液指導医、日本小児血液・がん専門医・指導医、PALSプロバイダー

学会・研究会活動:
近畿小児がん研究会運営委員、小児脳腫瘍治療研究会運営委員

瀧谷 公隆
(たきたに きみたか)

平成元年 大阪医科大学卒業 講師 医学博士
資格・専門医など:日本小児科学会小児科専門医、PALSプロバイダー

学会・研究会活動:
日本ビタミン学会評議員、日本酸化ストレス学会評議員、日本レチノイド研究会幹事、日本ビタミンE研究会幹事

鈴木 亮
(すずき りょう)

平成23年 高知大学医学部卒業 後期レジデント

非常勤スタッフ
河上 千尋
(かわかみ ちひろ)

済生会吹田病院 小児科
平成6年 大阪医科大学卒業 非常勤講師 医学博士

血液班スタッフ
患者さまをご紹介頂く場合

患者さまの御紹介の際には…
  まずは小児科外来に電話で御相談下さい。
  TEL/FAX: 072-683-1221(代)/072-684-5798

お急ぎの場合…
  そのまま転院/紹介での緊急入院も考慮致します。
  小児科 井上まで電話でご連絡下さい。

お急ぎでない場合…
  病診連携室を通じて毎週火曜日午後もしくは金曜日午前(担当:井上)へご紹介ください。

小児血液・腫瘍に興味がある研修医/医学生の皆様へ

当科血液・腫瘍グループは、小規模ながら血液疾患から各種固形腫瘍まで(院内各科との連携により)幅広く診療しており、小児血液腫瘍医としての総合的な研修が行えます。
日々の診療により、骨髄穿刺、骨髄生検、腰椎穿刺、髄腔内注射、中心静脈カテーテル挿入などの基本手技を習得すること、輸血療法、抗がん剤治療、免疫低下時の感染症治療などの知識を習得することが可能です。

日本小児血液・がん専門医研修施設研修プログラム

また、当院血液内科と共に日本骨髄バンク、臍帯血バンクの移植認定施設となっているため、定期的な合同カンファレンスや勉強会を開催し、情報交換や有益なディスカッションを行いながら、移植医療に取り組んでいます。

研究に関しては、APL患者におけるATRA薬物動態、新規レチノイド化合物による分化誘導メカニズムの検討(瀧谷)、ビタミンEや新規合成レチノイドによる白血病細胞、神経芽腫細胞のアポトーシス誘導(井上)など、それぞれが実験研究/臨床研究テーマを持ち研究を進めています(業績欄参照)。実験/臨床を問わず、全員が海外や国内留学を経験しています。参考までにこれまでの留学先を下記に示します。


〜 これまでの留学先 〜

  • 海外 
    ロサンゼルス小児病院、トロント小児病院
  • 国内 
    国立がんセンター中央病院、大阪府立母子保健総合医療センター、    
    千葉県がんセンター研究所、倉敷成人病センター医科学研究所、
    東京大学分子細胞生物学研究所
学術的業績 @急性前骨髄性白血病(APL)におけるATRA(レチノイン酸)誘導療法は、責任遺伝子であるPML/RARAを標的とした、分子標的療法であります。しかし、レチノイン酸耐性症例も散見され、その原因は、レチノイン酸代謝異常、MRD遺伝子の出現、RAR遺伝子異常などが考えられます。我々は、全国から集積されたAPL患者のレチノイン酸動態を検討し、以下のことを見いだしました。
  1. ATRA耐性例において、レチノイン酸代謝異常を認めること
  2. APLの合併症によりATRA動態が異なること
  3. 白血球CD38発現が、レチノイン酸濃度測定の代替になる可能性
現在、新規レチノイド化合物を用いて、新たな分化誘導メカニズムを検討しています。
  1. Takitani K, Koh M, Inoue A, Kawakami C, Kuno T, Tamai H.
    Pharmacokinetics of ATRA in adults and children with acute promyelocytic leukemia. Am J Hematol81:720-1, 2006
  2. Takitani K, Hino N, Terada Y, Kurosawa Y, Koh M, Inoue A, Kawakami C, Kuno T, Tamai H.
    Plasma all-trans retinoic acid level in neonates of mothers with acute
    promyelocytic leukemia. Acta Haematol. 2005;114(3):167-9. Acta Haematol. 2005;114(3):167-9.
  3. Takitani K, Inoue A, Koh M, Kawakami C, Kuno T, Kawamura N, Miyake M, Tamai H.
    Pharmacokinetics of low-dose all-trans retinoic acid in Japanese children with cancer. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2004 Jun;50(3):219-21.
  4. Takitani K, Nakao Y, Kosaka Y, Inoue A, Kawakami C, Kuno T, Tamai H.
    Low plasma level of all-trans retinoic acid after feeding tube administration for acute promyelocytic leukemia. Am J Hematol. 2004 May;76(1):97-8.
  5. Takitani K, Nagai K, Kanbe E, Inoue A, Kawakami C, Kuno T, Tamai H.
    Pharmacokinetics of all-trans retinoic acid in acute promyelocytic leukemia
    patients on dialysis. Am J Hematol. 2003 Oct;74(2):147-8.
  6. Takitani K, Koh M, Zhu CL, Inoue A, Kuno T, Tanoue H, Miyake M, Nakagawa T, Tamai H.
    Expression of retinoic acid receptor-target genes during retinoic acid therapy for acute promyelocytic leukemia. Leukemia. 2003 Mar;17(3):646-8.
  7. 瀧谷公隆、玉井 浩
    急性前骨髄性白血病におけるレチノイン酸薬物動態の検討 ビタミン 85(12), 631-644,2011

Aアポトーシス誘導作用の臨床的意義の一つである抗腫瘍作用は、癌治療において重要な役割を果たすことにより注目されています。現在様々な分子標的治療が開発、臨床応用されており、シグナル伝達を含めたアポトーシス誘導機序の詳細な解析はこれらの分子標的治療をさらに発展させるものと思われます。
様々な培養腫瘍細胞および臨床サンプルを用いて、当教室の研究テーマであるビタミンEや新規合成レチノイドなど、これまでの抗癌剤とは異なる薬剤の抗腫瘍作用の詳細なメカニズムを解析し、今後の癌治療の新たな発展に少しでも寄与したいと考えています。
  1. Inoue A, Takitani K, Koh M, Kawakami C, Kuno T, Tamai H.
    Induction of apoptosis by γ-tocotrienol in human cancer cell lines and leukemic blasts from patients: dependency on Bid, cytochrome c and caspase pathway. Nutrition and Cancer 63(5), 763-770, 2011
  2. Kanno T, Yorimitsu M, Muranaka S, Sato EF, Nagano M, Inoue A, Inoue M, Utsumi K.
    Role of α−tocopherol in the regulation of mitochondrial membrane permeability transition. J Clin Biochem Nutr. 35(1), 7-15, 2004 
  3. Inoue A, Muranaka S, Fujita H, Kanno T, Tamai H, Utsumi K.
    Molecular mechanism of diclofenac-induced apoptosis of promyelocytic leukemia: dependency on reactive oxygen species, Akt, Bid, cytochrome c and caspase pathway. Free Radic Biol Med. 37(8), 1290-1299, 2004
  4. 井上彰子、瀧谷公隆
    神経芽腫とレチノイド ビタミン84(10), .493-495, 2011

B一人ひとりを大切に診療し、次の患者さまに資する知見を少しずつ積み重ねるため、少しでも多くの医学的情報を拾うよう症例報告も行っています。
  1. Inoue A, Kawakami C, Takitani K, Tamai H
    Azacitidine in the treatment of pediatric therapy-related myelodysplastic syndrome after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
    J Pediatr Hematol Oncol.2014 in press
  2. Koh M, Shinohara J, Hongo Y, Okazaki T, Takitani K, Tamai H
    Case treated with triple therapy of lamivudine, interferon-β and prednisolone for acute exacerbation of chronic hepatitis B during pregnancy.
    Hepatol Res. 2013 Apr;43(4):425-9.
  3. Kawakami C, Kono Y, Inoue A, Takitani K, Ikemoto T, Tamai H.
    Severe bone marrow failure associated with human parvovirus B19 infection in a case with no underlying disorder.
    Int J Hematol. 2012 Dec;96(6):820-1
  4. Inoue A, Kawakami C, Takitani K, and Tamai H.
    Sustained molecular remission after arsenic trioxide and gemutuzumab ozogamicin in a pediatric patient with relapsed acute promyelocytic leukemia.
    Pediatr Hematol Oncol. 2012 Mar;29(2):170-2.
  5. Inoue A, Kawakami C, Takitani K, and Tamai H.
    Acute monoblastic leukemia that switched lineage at relapse to acute lymphoblastic leukemia: A case report.
    J Pediatr Hematol Oncol. 2012 Aug; 34(6):e258-60
  6. Kawakami C, Inoue A, Takitani K, Ikemoto T, Yonetani N, Takubo T, Tamai H.
    Acute monocyticleukemia blasts with cuplike nuclear morphology.
    Pediatr Hematol Oncol. 2011 Mar;28(2):147-9
  7. Kawakami C, Inoue A, Takitani K, Kanegane H, Miyawaki T, Tamai H.
    X-linked agammaglobulinemiacomplicated with Mycobacterium tuberculosis.
    Acta Paediatr. 2011 Mar;100(3):466-8
  8. Kawakami C, Inoue A, Takitani K, Yuki M, Tamai H.
    Acute monocyticleukemia with intracranial hemorrhage as the first manifestation.
    Pediatr International 52;e218-20, 2010
  9. Kawakami C, Takitani K, Inoue A, Koh M, Kanegane H, Miyawaki T, Tamai H.
    Three brothers of X-linked agammaglobulinemia: the relation between phenotype and neutropenia.
    IntJ Hematol90;117-9, 2009
  10. Takitani K, Inoue A, Kawakami C, Miyazaki H, Aomatsu T, Yoden A, Suzuki K,
    Tamai H.
    Reduced plasma ATRA level in a patient with Crohn's disease with acute promyelocyticleukemia.
    Leuk Lymphoma 50:300-2, 2009

C科学研究費補助金などの公的資金の獲得、受賞
  1. 平成17年度 日本白血病研究基金KYO賞 井上彰子
    「白血病細胞におけるNSAIDsのアポトーシス誘導機序解明」
  2. 平成19年度 ビタミンE研究会奨励賞 洪 真紀
    「Regulation of human α Tocopherol transfer protein gene expression through LXR signal pathway」
  3. 平成20年度 日本小児栄養研究会 井上彰子
    「癌細胞株におけるビタミンEによるアポトーシス誘導機構解析」
  4. 平成20-22年度 科学研究費 若手研究B 井上彰子
    「難治性急性前骨髄球性白血病のおける新規レチノイド化合物分化誘導療法の基礎的研究」
  5. 平成23-25年度 科学研究費 基盤研究C 井上彰子
    「新規レチノイドによる急性前骨髄球性白血病分化のエピジェネティクス機構の解明」