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強酸性電解水(有効塩素濃度10ppm)で新型コロナウイルス を不活性化できることを確認 -カイゲンファーマ株式会社との共同研究-

お知らせ

概要

本学微生物学教室とカイゲンファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、社長:中桐信夫)が実施した共同研究で、医療用内視鏡の消毒に用いる有効塩素濃度10 ppmの強酸性電解水※1(次亜塩素酸水の一種)が新型コロナウイルス※2を不活性化※3できることを明らかにしました。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)による先行研究※4において新型コロナウイルスを不活性化させるために有効な次亜塩素酸水の有効塩素濃度は35 ppm以上と発表されましたが、本研究により有効塩素濃度10 ppmの強酸性電解水で新型コロナウイルスを十分に不活性化できることが確認されました。すなわち、強酸性電解水とウイルス液を19:1の混合比率で1分間処理すると99.99%以上の不活性化(図1)、混合比率を99:1に増やすと不活性化効果がさらに向上することも確認されました(図2)。
新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい続けるなか、国内でも各医療機関において院内感染防止に細心の注意が払われていますが、その反面で感染を警戒して受診控えが起こっている状況です。強酸性電解水による消毒を適切に行うことは、医療機関における院内感染の防止対策に十分に寄与できるものと考えます。
なお、本研究成果をまとめた論文は現在学術雑誌投稿に向け準備中です。

※1:低濃度の塩化ナトリウム溶液を電気分解することにより生成された強酸性電解水を使用。
※2:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 WK-521株)(国立感染症研究所より分与)を使用。
※3:欧州試験規格EN14476:2013+A1:2015を参考にウイルスを4log10/mL以上減少する範囲を不活性化有効範囲とした。
※4:新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告).独立行政法人製品評価技術基盤機構,
2020年6月29日. ( https://www.nite.go.jp/data/000111315.pdf )

詳細説明

1.研究背景

強酸性電解水は、低濃度の塩化ナトリウム溶液を電気分解することにより簡便に生成でき、医療現場では医療機器である軟性内視鏡の消毒や手指の消毒に使用されています。またタンパク質などの有機物により容易に失活するという特徴を持つため、廃棄の際に環境負荷が少ないことが知られています。
しかしながら、軟性内視鏡の消毒で使用されている強酸性電解水の有効塩素濃度は10 ppm前後と、先行研究※4において新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)に有効(不活性化99.9%以上)と報告された次亜塩素酸水の有効塩素濃度(35 ppm以上)より低い濃度です。先行研究で35 ppm未満の有効塩素濃度(試験に供されたのは19~26 ppm)ではSARS-CoV-2不活性化が99.9%未満にとどまっていましたが、ウイルス液中に5%の血清を含む試験系で実施されており、血清中には多量のタンパク質が含まれることから、強酸性電解水の効果が減弱されている可能性が考えられました。このことから、血清濃度を低下させた試験系を使用すれば、35 ppmより低い有効塩素濃度であっても強酸性電解水はSARS-CoV-2を不活性化する可能性があると考えました。
そこで、大阪医科大学微生物学教室とカイゲンファーマ株式会社は、共同研究として、医療機器である軟性内視鏡の消毒に用いる強酸性電解水(有効塩素濃度10 ppm)のSARS-CoV-2に対する不活性化の有効性評価試験を実施致しました。

2.試験方法

試験には、軟性内視鏡の消毒を想定した強酸性電解水(有効塩素濃度:10.30 ± 0.20 ppm、pH:2.61 ± 0.01、酸化還元電位:1114 ± 2.89 mV)を用いました。強酸性電解水と2%血清を含むSARS-CoV-2液(1.2 x 107 PFU/mL)を1分間接触させた後、2日間培養し、プラークアッセイ法を用いてウイルス感染価(PFU/mL)を算出致しました。なお、強酸性電解水とSARS-CoV-2液の混合比率は、先行研究と同じ19:1のほか、軟性内視鏡の消毒には大量の強酸性電解水を使用することから99:1の混合比率でも試験を実施致しました。

3.試験結果

強酸性電解水とSARS-CoV-2液を1分間接触させた結果、いずれの混合比率でもSARS-CoV-2を99.99%以上不活性化しました(図2)。また混合比率99:1では、19:1と比較して、より多くのウイルス量が減少しました。

まとめ

本研究により、強酸性電解水は有効塩素濃度が10 ppmであっても、SARS-CoV-2を1分間で99.99%以上不活性化することができることが明らかになりました。
一方で、タンパク質量が少ない試験系である混合比率99:1では、19:1よりも強酸性電解水の不活性化効果が増強される結果となりました。これは、当初の想定通り、ウイルス液中に含まれるタンパク質量が強酸性電解水の不活性化効果に影響を与えていることを反映していると判断されました。医療現場での軟性内視鏡の消毒には、数L~十数Lの強酸性電解水を使用するため、混合比率99:1の試験の方が、より医療現場での実使用に近い試験方法であると考えられます。同時に、医療現場で安定した強酸性電解水の消毒効果を得るためには、従来どおり、前もって用手洗浄によりタンパク質等の汚れを十分に除去しておくことが肝要であることを示します。
今回の研究結果は、医療機関での院内感染防止対策に寄与することが十分に期待できるものであり、患者様に安心して受診していただける環境を提供し、異常を早期発見するための検査や早期の治療の機会が失われることがないよう、貢献できるものと信じております。