事業概要

本学に「口腔内細菌叢研究の総合的推進」事業を立ち上げ、地域住民を対象とするコホート研究と融合し、市民の健康寿命延伸に寄与するエビデンスの提供、健康増進施策への提言及び研究成果の事業化など、研究成果を還元し、少子高齢中核市を活性化する「高槻モデル」を創出する。将来、この「高槻モデル」を他の地域へ展開し、「次世代オミックス医療研究拠点」を有する世界有数の医療系私立大学 となることを目指す。

事業目的

口腔内細菌叢は、慢性炎症・免疫応答の病態に関与し、生活習慣病をはじめ各種疾患との関連が示唆されている。本学では、全国に先駆け自己免疫疾患における口腔内細菌叢の遺伝情報の網羅的解析を実施し、疾患進行度との関連等について検討を行ってきた。本事業は、これらの研究基盤を礎に口腔内細菌と健康寿命に影響する病態や様々な疾病発症との関連及び口腔内細菌叢の変化に影響する要因の解明を目指すものである。本事業の目的は、学長のリーダーシップの下、大学が一体となり基礎研究と 実地検証から口腔内細菌叢研究を総合的に推進し、ライフコースアプローチとの融合により、地域の保健活動と連携した子どもから高齢者までのライフステージに応じたシームレスな疾病予防や介護予防への医学研究の活用及び研究成果の事業化を通じて、本学が所在する高槻市の健康福祉及び経済発展に貢献することである。
また、本事業は、本学の建学の精神に謳われている「研究成果を実地医療に生かす」ことを目指し、高槻市及び高槻商工会議所と連携し、本学附属病院と高槻市をフィールドとして実施する。本事業の成果を、高槻地域住民の健康寿命延伸と地域企業との産学連携事業へと繋げ、地域の持続的発展に貢献する大学として、この「高槻モデル」を全国展開することも目的としている。

2017年度(平成29年度)の実施目標及び実施計画

目標(研究活動)

目標1:消化器・呼吸器癌患者試料で口腔内細菌叢を解析と標準化プロトコールの確立。
目標2:各年代を対象とするコホート研究実施体制構築。先行的にパイロット調査実施。
目標3:健康状況・公衆衛生課題の「見える化」のデータベース作成に必要な手続き開始。

目標(ブランディング戦略)

目標A:キックオフシンポジウムの開催し、本学の取り組みを周知し、意見交換を図り情報収集。
目標B:パンフレット、ホームページ、SNSを活用した広報により本事業の認知度を上げる。
目標C:健康教室、食育イベントに参画し、市民の関心を高める。児童・学生を対象とした講義 や実験等のイベント実施し、本学の認知度を上げる。

計画(研究活動)

目標1:健常者で既に確立したプロトコールに従い、当該疾患患者から試料を採取し、患者を対象とした細菌叢解析の方法を確立、事業体制を整備。消化器・呼吸器癌患者各200名の唾液試料を採取し解析 する。
目標2:高槻市との協力実施体制を確立し、0~24歳は5歳毎に100名、25歳以上は10歳毎に100名を対象とし、サンプル採取、口腔内細菌叢の解析及びアンケート調査実施。各年齢層における口腔内細菌叢の特徴を明らかにし、生活習慣等との関連を横断的に解析。細菌叢解析は遺伝子解析的手法だけでなく、培養法による細菌学的な解析にも活用するため、一部対象者について口腔スワブを採取し保存。 本解析によって、現在明らかとなっていない口腔内細菌叢確立のプロセスの解明を目指す。目標達成指標は試料採取を実施した対象者数。
目標3:高槻市と協力体制を整え、介護・健康・福祉情報や地域情報を収集し、結合可能な情報を把握。個人で連結可能な医療費、要介護化の有無、死因について、市の協力の可否をもって目標達成指標とする。

計画(ブランディング活動)

目標A:市民200名、行政30名、産業界30名を対象にキックオフシンポジウムを平成30年1月に開催。 本事業のブランディング戦略及び将来構想を説明し、意見交換を行い、事業開始1年目における本学に対するイメージ等を把握。各ステークホルダーの目標とする参加人数の70%以上を確保。
目標B:高槻市民を対象に、各講座で本事業の意義や期待される市民への研究成果還元について説明し、本学の認知度を高めるとともに、市民が研究に参画する意識を高める。年度内に複数回の講座開催を目標とする。
目標C:高槻市内の小学校高学年から中学及び高校生200名、市外から50名の参加者を確保。研究活動や研究成果に関する講義や実験等を通じ、本学の活動について理解してもらい、キャリアパスとして医療従事者や研究者を意識させるような興味、関心の向上を図る。参加者へのアンケートで本学の認知度とイメージを把握。目標達成指標は参加した児童・生徒の人数。

2017年度(平成29年度)の事業成果

研究活動目標

目標1:H29年10月と11月に高槻市民108名対象に実施した。また、口腔内細菌叢サンプル取得に関するプロコトル「OMCメソッド」及び口腔内細菌叢データベース構築について、権利化・権利保護等の協議を開始した。なお、口腔内細菌叢サンプル取得人数は、2018年2月末時点で270名に達した。その取得サンプルに対し、ゲノム取得終了・・・100%、シークエンス解析終了・・・70%、疾患との対比・・・解析中である。ゲノム解析システムを構築することができ、年度目標はほぼ達成できた。
目標2:平成30年1月19日に本学、高槻市及び高槻商工会議所との三者協定を締結するとともに、高槻市長が平成30年3月の市議会で発表された平成30年度施政方針大綱にも口腔保健分野における調査研究への協力が記された。これらよりも前に、本事業の選定に先駆けてH29年10月に講演会を開催、 高槻市民245名が参加、その内170名以上がインターバル速歩実践かつコホート研究参加の希望があり、108名を抽選して口腔衛生・機能関連指標を含む健康調査を実施し、このうち40名にインターバル速 歩の介入を行い、継続中であり、その後にコントロール群と入れ替え同じインターバル速歩介入を行うことで疫学研究の実施体制構築の基礎を作成した。さらに、母の口腔細菌叢と生活習慣等が児の口腔細菌叢形成に与える影響を明らかにするため、妊婦を対象として本学附属病院にて先行調査を行うことが本学倫理委員会で承認され、平成30年6月の調査開始に向け準備を進めている。一般市民に対する研究推進として、健康高齢者からのサンプルを100検体収集し、その解析を実施するなどして、着実にコホート研究の実施基盤を構築した。また、高校生を対象とした唾液採取を高大接続の授業の一環としても進め、年齢別対象を着実に増やしてサンプル採取を行っている。現在本学附属病院内の各診療科(循環器内科、心臓血管外科、腎泌尿器外科、小児科、産科・婦人科、頭頸部外科、脳神経外科等)の協力 体制を構築している中で、次の横断研究が開始した。小児科 アレルギーグル—プ、膠原病内科 リウマチ疾患、産科 妊婦健診患者、新生児科 新生児の口腔内細菌叢、神経難病センター ALS パーキ ンソン病、耳鼻科 耳下腺腫瘍。さらにシンガポール国立病院との間で糖尿病患者の口腔内細菌叢の共同研究も比較研究として開始した。
目標3:H30年1月10日高槻市医師会、歯科医師会、薬剤師会からの事業協力の内諾を得た。また、目標2に記載しているとおり、高槻市、高槻商工会議所との間で三者協定を締結したことにより、目標は達成した。

ブランディング活動目標

目標A:H30年1月22日にキックオフシンポジウムを開催、高槻市民や関係者含め約400名の参加があった。(資料配布349部、アンケート回収287部)
目標B:H30年1月に専用ホームページ開設、キックオフシンポジウムで市民へ事業説明実施、2月に毎日新聞で事業及びシンポジウムの記事掲載、3月にたかつきDAYS(市の広報誌)に三者協定の記事掲載、本ブランディング事業のロゴマークも確定した。
目標C:H30年2月に高槻中学2年生全員238名に講義実施、本学の活動と事業趣旨説明とアンケート 調査実施した。医療従事者や関係者向けに2月内で4回の本ブランディング事業関連の講演を実施した。

2017年度(平成29年 度)の自己点検・評価及び外部評価の結果

自己点検・評価

平成30年3月13日(火)及び4月10日(火)に開催した研究戦略会議において、本事業の進捗状況報告により自己点検・評価を行ったが、特に問題点等の指摘も無く、平成29年度の活動に対しては概ね適切な研究実施及び運営がなされているとの評価と判断であった。また、次年度以降に向けては高槻市民に対して更なる周知、アピールを行い「たかつきモデル」の認識を高めていく必要があるとの意見があった。

外部評価

平成30年5月23日に開催した大阪医科大学研究ブランディング事業評価委員会において、外部委員より下記の評価を及び意見を得た。
1)平成29年度事業評価
事業計画に従い適切に実施されているとの評価であった。
2)今後に向けての意見
平成30年度計画に向けても着実に進めること、「健康寿命をのばすたかつきモデル」を市民へどういう形で還元するのかを3年目の中間報告に向けて検討していくべきとの意見があった。

2017年度(平成29年度)の補助金の使用状況

平成29年度経費総額:41,381千円。
(内訳)
1)口腔内細菌叢解析・創薬に関わる研究費として23,000千円。
主たる用途は大規模口腔内細菌叢ゲノム解析、全身疾患と口腔内細菌叢との網羅的解析、口腔機 能検査機器などの研究機器購入。
2)疫学研究に関わる研究費として14,377千円。
主たる用途は、研究機器購入、補助員の人件費、市民への啓蒙活動と健康指導及び調査等。
3)事業の事務部門の費用として4,004千円。
主たる用途は、専用ホームページ設計・作成・開設費用、各種広報活動とその支援費用、高槻市と商工会議所並びに医師会等との勉強会・講習会・運営委員会開設費用等。