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  2. 健康寿命をのばす たかつきモデル
  3. 2019年度の進捗状況・3年間の総括報告

事業概要

本学に「口腔内細菌叢研究の総合的推進」事業を立ち上げ、地域住民を対象とするコホート研究と融合し、市民の健康寿命延伸に寄与するエビデンスの提供、健康増進施策への提言及び研究成果の事業化など、研究成果を還元し、少子高齢中核市を活性化する「高槻モデル」を創出する。将来、この「高槻モデル」を他の地域へ展開し、「次世代オミックス医療研究拠点」を有する世界有数の医療系私立大学 となることを目指す。

事業目的

口腔内細菌叢は、慢性炎症・免疫応答の病態に関与し、生活習慣病をはじめ各種疾患との関連が示唆されている。本学では、全国に先駆け自己免疫疾患における口腔内細菌叢の遺伝情報の網羅的解析を実施し、疾患進行度との関連等について検討を行ってきた。本事業は、これらの研究基盤を礎に口腔内細菌と健康寿命に影響する病態や様々な疾病発症との関連及び口腔内細菌叢の変化に影響する要因の解明を目指すものである。本事業の目的は、学長のリーダーシップの下、大学が一体となり基礎研究と実地検証から口腔内細菌叢研究を総合的に推進し、ライフコースアプローチとの融合により、地域の保健活動と連携した子どもから高齢者までのライフステージに応じたシームレスな疾病予防や介護予防への医学研究の活用及び研究成果の事業化を通じて、本学が所在する高槻市の健康福祉及び経済発展に貢献することである。
また、本事業は、本学の建学の精神に謳われている「研究成果を実地医療に生かす」ことを目指し、高槻市及び高槻商工会議所と連携し、本学附属病院と高槻市をフィールドとして実施する。本事業の成果を、高槻地域住民の健康寿命延伸と地域企業との産学連携事業へと繋げ、地域の持続的発展に貢献する大学として、この「高槻モデル」を全国展開することも目的としている。

2019年度(平成31・令和元年度)の実施目標及び実施計画

目標(研究活動)

目標①:糖尿病患者試料で口腔内細菌叢を解析。疾患特異的な口腔内細菌構成比の探索、
    細菌叢に関する基礎医学的解析実施。
目標②:コホート研究のリクルート完了。健診データと口腔内細菌叢を横断的に解析。
目標③:既存統計資料の「見える化」データベースを用いた空間疫学研究。
目標④:口腔内細菌叢の改善を図る介入方法の予備的検討。

目標(ブランディング戦略)

目標A:シンポジウムを開催し、「高槻モデル」の認知度を高める。
目標B:市民、小学生~高校生対象の講座、口腔ケアイベント等を通じ研究成果を公開。
目標C:産学連携により、AMED等の競争的外部資金に応募。

計画(研究活動)

目標①:患者200名の唾液を採取し解析。疾患特異的な細菌種の探索のため、単離・培養、全ゲノム解析を実施。生活習慣病該当者に共通する
    口腔内細菌に対してバイオフィルム形成抑制物質を発掘。このバイオフィルム形成抑制剤と併用する静菌効果を有する物質を発掘。
目標②:各コホートのリクルート完了。職域・高齢者コホートでは特定健診等、次世代コホートでは1歳6か月健診や質問票郵送により追跡調査。
    市から異動情報等を取得。メタボリック症候群等と口腔内細菌叢との関連を検討し、シンポジウム等で報告。
目標③:入手可能な既存統計資料を利用申請し、「見える化」データベースを構築し、空間疫学研究の実施を行う。高槻市の健康に関する
    現状分析を行い、近隣市との比較や全国における位置づけ、またその要因分析を行う。
目標④:地域高齢者30名を対象に、口腔ケアと運動の効果を予備的に検討。

計画(ブランディング活動)

目標A:市民300名、行政50名、産業50名を対象に、本事業の経過並びに研究成果を報告。「高槻モデル」構想を説明し、各ステークホルダー
    との意見交換実施。本学のイメージや今後の展望について意見収集し、事業開始当初からの変化を把握。各ステークホルダーの目標と
    する参加人数の70%以上を確保。
目標B:昨年度に引き続き、公開講座やイベントを継続実施。目標は、当該年度イベント参加者計1,000名。
目標C:研究成果を基に、特定の細菌を検出するスクリーニングキットを企業と連携して開発。目標達成指標は、AMED等の競争的資金への応募。

2019年度(平成31・令和元年度)の事業成果

研究活動目標

目標①:平成30年度に採取した糖尿病患者の口腔内細菌叢の解析データをもとに糖尿病患者、
    健常者との間の口腔内細菌叢の多様性比較検証を次のとおり実施した。
     ●Alpha diversity (1つのサンプル内の菌の多様性)
     ●Beta diversity (weighted UniFrac distance)
     (:サンプル間の細菌種類と量の違い)
    さらに,LefSe解析も行い,その成果を国際糖尿病学会(IDF)にて発表した。
    また、ランダムフォレスト解析により,糖尿病患者に固有の細菌叢を見出し
    ました(論文作成中)。
    この手法を用いて、動脈硬化(AS)、小児自己免疫疾患の口腔内細菌叢を
    健常者と比較検証し、疾患固有の口腔内細菌叢、固有菌種を見いだし、
    動脈硬化患に特徴的な細菌叢に関しては,その成果を日本口腔外科学会および,AHA(American Heart Association Scientific
    Sessions Meeting)2019にて発表した。
    なお、患者よりこれまでに採取した検体は約1800人分,そのうち糖尿病患者 129人,循環器疾患患者 271人 である。
    しかし、3月9日以降は、サンプル採取を中止。
目標②:高齢者コホートは、全身状態・健康寿命に対する口腔機能の影響を検討するたかつきシニアコホートのベースライン調査を6月、9月、11月
    に実施し、累計569名について口腔機能等の情報を収集した。インターバル速歩介入事業については、平成31年度に第3期及び第4期の介入
    を約90名について修了した。
    次世代コホートは、学附属病院及び市内2クリニックでリクルートを実施し、妊婦331名(児196名)について同意取得し、唾液採取等実施
    した。
    さらに、妊婦とその児の唾液のメタゲノム解析を行い、母の細菌叢の多様性は出産前後で変化せず、母と生後1ヶ月児間における多様性の
    差が大きいことを明らかにした。
    職域コホートについては、2020年度以降での実施予定で準備を開始した。
目標③:人口動態統計を用いて、高槻市の死亡データに対し、地理情報を付与し、小地域別の死亡率に関する地図を作成した。これ以外で、関連資料の
    データを収集し、死亡データと地理的な関連づけを行う準備、健康寿命・平均寿命や主死因別死亡率を市区町村別に算出し、全国の同規模の
    市区町村との比較を行った。
    サンプルから『口腔年齢』などのデータベースの構築を行うことについては、2020年度実施予定で準備を開始した。
目標④:インターバル介入群では、口腔に関するQOL(GOHAI)の改善を認めることを明らかにした。さらに男性のインターバル介入群で、
    動脈硬化指標改善を認めたが、口腔機能改善を介した効果は認めなかった。運動介入対象者のリクルートは、H30年度第3・4期介入を新たな
    対象者に対し実施した。

ブランディング活動目標

目標A:3年間の事業成果報告書の市民版を作成し、配布等を行い、認知向上へ繋げる。
    これを2020年度以降で実施検討の予定であり、高槻市が健康に強い街を
    イメージする戦略の考案は、2020年度実施についての検討を開始した。
    また、講演会等イベントでアンケートを収集した。
    たかつきモデルの周知・PR活動については、2017年度~2019年度3年間の
    本事業の成果報告書(冊子)を500部作成し、文科省、他大学ブランディング
    事業採択校、理事会、教授会等で配布、さらに法人広報室より報道機関等への
    配布を適宜実施済。
目標B:市民公開講座の継続として2回実施した。
     ①7月20日 来場者数は、374名であった。
     ②11月16日 来場者数は、291名であった。
    この2回の講座は、2019年度から高槻健康カレンダーに掲載、健幸ポイント対象になった。
    市民団体の中から、本事業の核となる市民参加型動運動の素地人材の育成については、2020年度以降での実施について検討を開始した。
目標C:AMED等への競争的資金への公募申請については2020年度以降での実施について検討を開始した。

2019年度(平成31・令和元年度)の自己点検・評価及び外部評価の結果

自己点検・評価

2020年3月3日(火)及び4月14日(火)に開催した研究戦略会議において、本事業の進捗状況報告、収支報告、3ヵ年の成果報告書作成により自己点検・評価を行ったが、特に問題点等の指摘も無く、2019年度の活動に対しては概ね適切な研究実施及び運営がなされているとの評価と判断であった。また、文部科学省からの通達により事業支援が中止となったことによる3年間の総括として、事業成果報告書を作成し、その成果を取りまとめた。学術版として作成したこの事業成果報告書は、文科省、ブランディング事業採択校、本学関係者(理事、評議員等)に配布し、内外広く、その成果をPRすることができ、3年間の活動の締めくくりもできたので、適切な事業活動であったものと評価する。
今後については、採択時当初の5年間での計画内容に従い、この3年はほぼ予定通りに進めている。引き続き次年度以降、文部科学省の事業支援は無くなるが、本学独自に予算を確保して2020年度以降は、「たかつきモデル」プロジェクトとして事業・研究を引き続き進めることを決定した。

外部評価

2019年度事業評価委員会は、コロナウイルス感染症対策のため、通常開催ではなく、事業活動実績の資料等をメールで配信しての、メール審議での委員会として開催、委員より下記の評価及び意見を得た。
1)2019年度単年の事業評価
 ほぼ、事業計画に沿って進められており、成果も確認でき良好であると判断する。
その中で、目標①は論文出版を期待したい。目標②・④は、コホート研究が順調に進行しており、目標③は高槻市との協力で進展があることから、3つとも継続を願う。ブランディング事業目標は、社会還元という大学の使命であるから、経常的な事業としての継続をお願いしたい。最後に、今年度は出来なかったが企業との協力を得て、AMEDへの申請から事業化・製品化に繋がることを期待する。

2)3か年の総括
 2020年度以降に事業が飛躍的発展するものと期待していただけに、文科省の対応やこの社会情勢は残念であるが、AMED等外部資金獲得へ今後は積極的に挑戦していただきたい。また、コホート研究は5年後、10年後に結果が出てくる研究であるので、このたかつきモデルの創出に向けて可能な限り継続することを希望する。と同時に、全国へ幅広く認知されて広まることを期待するものである。

2019年度(平成31・令和元年度)の補助金の使用状況

2019年度(平成31年度・令和元年度)経費総額:47,031千円。
(内訳)
1)口腔内細菌叢解析・創薬に関わる研究費として20,991千円。
2)疫学研究に関わる研究費として18,875千円。
3)事業の事務部門の費用として7,165円。
  各研究費及び事務部門費として、それぞれ適切に使用しており、特に問題はございませんでした。