大腸疾患の外科治療について

外科治療(手術)の対象となる主な大腸疾患  

外科治療(手術)の対象となることが最も多いのは、大腸がんです。良性疾患では、炎症の反復・膿瘍形成・狭窄を来した大腸憩室炎、家族性大腸腺腫症および内科的治療抵抗性の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などが手術対象となります。

 

大腸がんの治療について  

大腸がんはこれを放置すれば大きくなって下血(肛門から出血する)や腸閉塞(腸がつまって便やおならがでなくなる)を起こしてきます(写真1,2)。このため治療が必要ですが、お薬や放射線などの治療だけでは治すことができません。がんが大腸壁の粘膜内(粘膜下層内でも浅い部分)にとどまっていれば大腸内視鏡で切除する方法(内視鏡的切除:ポリペクトミー/EMR/ESD)が有用ですが、粘膜下層以深に深く拡がっている場合には周囲のリンパ節と一緒に腸切除をする必要があります。とくに、胸部レントゲン検査、腹部CT検査などで肺や肝臓などへの遠隔転移がなく、心・肺・肝・腎機能などの全身状態にも重篤な異常所見を認めず全身麻酔に耐えられると判断されれば、現在の医学的知見ではまず手術により大腸がんを摘除することが最も有効な治療手段と考えられています。

写真1 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でみた進行大腸がん(がんから出血している写真2注腸検査でみた進行大腸がん(がんのために腸がつまりかかっている)

 

大腸がんの手術について  

大腸がんは、転移して拡がっていく悪性腫瘍であるために、転移しない良性腫瘍のように腫瘍の部分だけを摘除しても治す手術にはなりにくいのです。

転移には、
1)がんが、その存在する部分の腸に分布する血管内に侵入して肝臓や肺などの遠隔臓器へ拡がる血行性転移、
2)がんが、その存在する部分の腸に分布する血管周囲のリンパ節を中心方向に伝わって拡がるリンパ節転移、
3)がんが、その部分の腸管壁を破って腹腔内(腸の外でお腹の中)腹膜に拡がる腹膜転移、
4)がんが、腸管壁を破って隣接する他臓器に拡がる他臓器浸潤、
5)がんが、腸管内で周囲に拡がる管腔内転移
があげられます(図1)。

  1)の遠隔転移、3)の腹膜転移や4)の他臓器浸潤が高度であれば手術だけでは十分な治療ができないことも多いのですが、これらがないような程度であれば、がんの手術(がんを周囲の腸管・腸間膜内のリンパ節とともに一括切除すること)を行うことが最も有効とされています(図2)。なお、1)の遠隔転移、3)の腹膜転移や4)の他臓器浸潤があっても場所・個数や程度によって、初回に大腸の手術と同時に手術して取りきれる場合、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療を併用したのちに手術で取りきれるようになる場合などがあり、初回治療を受けられる前に個々のケースを十分に検討しておくことが重要です。また、具体的な切除範囲などの詳細については、がんの部位・進行度や全身状態などによって異なります。
  したがいまして、セカンドオピニオンも含めて大腸がん治療の専門医に相談されることをお勧めします。

図1 大腸がんの転移について大腸がんの主な転移には、①肝臓や肺などへの血行性転移、②支配血管周囲のリンパ節に沿って拡がるリンパ節転移、③腸管壁を破ってお腹の中へ拡がる腹膜転移、④腸管壁を破って隣接する他臓器(膀胱など)に拡がる他臓器浸潤などがあります 図2 大腸がんの手術の基本がんを周囲の腸管・腸間膜内のリンパ節とともに一括切除すること

 

麻酔を含めた手術の危険性について  

手術を行うには、全身麻酔(気管へチューブを挿入して麻酔をかける)が必要です。手術前に検査をして心・肺・肝・腎機能などの全身状態に重篤な異常所見を認めず、全身麻酔に耐えられるかどうかを判定します。しかし、実際に全身麻酔をかけた際、さらに続いて手術をした際に心・肺・肝・腎機能などの全身状態に大きな影響が出る場合があります。危険な不整脈などの重篤な変化が起これば手術を中止せざるを得ない場合もあります。また、潜在する動脈硬化などによる血栓が脳や心臓や肺などに飛んで術中・術後に脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞などの重篤な状態に陥ることも稀にあります。  
手術中の偶発症(起きると困ること)には出血、尿管や腸管などの臓器損傷などがあり、輸血や損傷部の修復などが必要になることがあります。とくに、大腸がんの進行度が高度で血管、尿管や腸管などの臓器にがんがおよんでいる場合には、これらの偶発症の危険性が高くなります。  

なお、万一このようなことが起こった場合には適切な対処が必要です。 したがいまして、麻酔科や関連各科とも連携のとれた大腸がん手術実績の豊富な病院での治療を受けられることをお勧めします。