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大阪医科大学附属病院における大腸疾患の外科治療について

奥田 準二

大阪医科大学附属病院 消化器外科 下部消化管外科(大腸外科)チームの構成

指導医 :奥田準二(1984年卒)
主治医 :田中慶太朗(1991年卒)
担当医 :山本誠士(2003年卒)
:鱒渕真介(2004年卒)
:大住 渉 (2006年卒)
:濱元宏喜(2007年卒)
研修医 :ローテーション

 

大阪医科大学附属病院 消化器外科 下部消化管外科(大腸外科) チーム医療の特色

急性虫垂炎などを除いたほぼ全ての大腸疾患(大腸がん、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、家族性大腸腺腫症、大腸憩室炎など)の専門的外科治療は、上記の指導医、主治医と担当医からなる大腸外科チーム で外来初診から術前検討、入院・手術と術後管理、さらに退院後はご紹介医の施設などとの医療連携を中心としたフォローアップまで一貫して行える体制にしています。

私(奥田準二)は指導医として、セカンドオピニオン外来を含めた大腸初診外来と手術(執刀と指導)を主にし、病棟では主治医・担当医のチームのバックアップをしています。
主治医・担当医は外来・手術と病棟ではチーム回診を行い、術前から術後まで患者さんのトータルケアをしています。
手術はもとより、外来初診から術前検討、手術、術後ケア、退院前後の結果説明とご紹介医等との医療連携によるフォローアップまで充実したチーム医療を行っています。

この結果、患者さんやご紹介医への対応も迅速かつ的確となり、術前検査も漏れなく無駄なく、手術手技も益々向上するとともに、先回りした術後管理により合併症も目に見えて減少し、入院期間も短くなっています。ただし、単なる在院日数の短縮だけでなく、あらかじめ患者さんやご家族の希望にも配慮した予定退院日を設定して予定通り気持ちよく退院してもらえるように努力しています。また、退院前説明と退院前チェックにも十分注意し、安心して退院していただけるようにしています。退院後は、進行度別にシステム化された外来での追加治療や個別化した経過観察により、再発の減少と適切な治療効果の判定が行えるようにしています。

昨今、多くの病院で麻酔科医の不足や腫瘍内科医の不在など院内連携の問題点が指摘されていますが、当院の麻酔科や化学療法センターはファーストクラスの技術に加えて患者さん本位のプロ意識と優しさを持って日々の診療に当たっており、恵まれた環境の中でさらに多くの患者さんに安全で質の高い治療を提供できるように連携しています。

より優れた診断と治療が患者さん本位に実践できる体制になっていますので、手術件数が急増して質・量ともに国内外屈指のレベルに達した現在も、通常、初診から1〜3週間以内の手術を基本としています。

大腸がんの手術件数が年間500件を越えても、一人ひとりの患者さんの治療に検証と反省を繰り返して最適な治療を目指す姿勢は変わりません。

写真6 優れた診断と治療が患者さん本位に実践できる体制

大阪医科大学附属病院における大腸がん外科治療の特徴

近年、大腸がんは増加していますが、当院における大腸がん手術数は全国屈指となっています。昨年(2017年)は、極めて難易度の高くて長時間を要する手術のご紹介が急増しましたため、手術数は457人でした(表1)。ただし、その中でも腹腔鏡下手術が98%(448件)であったことからもわかりますように、最先端の腹腔鏡下大腸がん手術の技術がさらに向上しています。本年度は、チーム力と新手術棟の稼働力のアップにより、質・量ともに益々進化しています。

私どもは、腹腔鏡下大腸手術の草創期から開発・導入に携わり、これまでの当院の腹腔鏡下大腸がん手術総数は5400件を越えて国内トップクラスの手術数です。 また、依頼・出張手術なども含めた私自身の腹腔鏡下大腸手術件数は、年間250件以上で総数は5800件を越えており、個人の手術数でも国内外でトップクラスです。
最近では、腹腔鏡下大腸がん手術を施行する病院も急増してきていますが、そこで問題となるのが手術の質です。
個々の外科医の腹腔鏡下手術の技術力を高いレベルで評価すべく2004年から日本内視鏡外科学会によって内視鏡外科技術認定制度が開始されました。取得者は、同学会ホームページ(http://www.jses.or.jp/about/certification.html)に掲載されています。これまでに当院では私を含めて34人(現在当院在籍の奥田準二、田中慶太朗、山本誠士、鱒渕真介ならびに当院での研修や他院での私の指導で取得した30人)の内視鏡外科技術認定医(審査臓器:大腸)を輩出しており、これも国内トップクラスの評価です。
さらに、他病院で手術が困難な極めて難易度の高い手術の依頼、ご紹介や受診も急増しています。とくに、大腸の中でも最も難易度の高い直腸がんの手術数が全体の60%となっています。これは、国内外の多くの医療施設(病院)や大腸専門医から当院の腹腔鏡下大腸手術の質(安全性と技術力)が極めて高いと評価されている証でもあります。

以上のように、当院の大腸がん手術は、手術数のみならず手術の質も極めて高いと厚く信頼されており、その実績(手技、手術数と成績に加えて極めて難易度の高い手術における技術力と判断力)も国内外でトップの評価を受けています。

2016年に20室の最先端手術室からなる新中央手術棟が完成しましたが、本年度よりチーム力のアップとともに稼働力もさらに向上しています。これにより、安全、安心で最良の手術をさらに多くの患者さんに迅速かつ的確に施行できます。

最先端手術室からなる新手術棟

 

とくに当科では、がん手術の原則遵守を基本に、ほとんど出血のない卓越した手技を基本としています。

また、お腹の地図となる「統合的 3D-CT画像」(図1、図2、図3)を術前シミュレーションと術中ナビゲーションに活用するなどして「腹腔鏡下大腸がん手術」をより安全で的確な「低侵襲オーダーメイド手術」に進化させ、進行がんへも段階的に適応を拡大してきました。当院の放射線科とのチームで世界に先駆けて独自に考案し、国内外で初めて導入した「統合的 3D-CT画像」(お腹の地図)には、最先端の放射線診断技術が応用されており、「腹腔鏡下大腸がん手術」をさらに安全・的確・迅速に行うための“秘密兵器”とも賞されています。

当院の腹腔鏡下大腸がん手術は、開腹大腸がん手術と比べて術後の再発も少なく、良好な成績が得られています。(5年生存率:進行度T 98%、U 94%、Va 88%、Vb 76%、W 41% )
大腸がんの中で最も難度の直腸がんに対する腹腔鏡下手術の術後合併症の縫合不全率は、ここ数年1〜3%(通常は5〜10%)と低くなっています。また、多くの患者さんが求められる肛門温存率は90〜93%(通常は80〜85%)と高くなっています。
さらに、3次元腹腔鏡や経肛門的微細手術などの最先端治療をシステム化し、ICG蛍光法でのリンパ流・血流確認によるリアルタイムナビゲーションなども導入して個々の患者さんに最適な手術となるように個別化して適用するなど工夫を継続しています。

当科では、盲腸から直腸まで全ての部位で進行がんも含めた大腸がんに対して的確な診断、適切な適応と十分なインフォームド・コンセントのもとに腹腔鏡下手術を行っています(表2)。また、高齢者や肥満者も腹腔鏡下手術の適応外とはせず、開腹手術既往者も癒着に注意して腹腔鏡下手術を行っています。さらに、全身状態(心・肺・肝・腎機能)不良者でも活動力があって全身麻酔に耐えられれば適応としています。

当科の腹腔鏡下大腸がん手術の手術時間は、約2〜4時間程度、術後の入院期間は約1〜2週間(開腹手術では、手術時間はほぼ同じですが、入院期間は約1〜2週間長くなります)です。ただし、がんの部位・進行度やお腹の中の状態(癒着や肥満)などで難易度が違います。したがいまして、個々の患者さん・ご家族への説明の際に、腹腔鏡下大腸手術の長所・短所を含めて話し合いながら十分な理解のもとに受けていただくように心がけています。

ここで私どもが強調しておきたいのは、個々の患者さんに最適の治療を行うことが最も重要だということです。すなわち、私どもは、患者さんやご家族が求められているのは、腹腔鏡下手術か開腹手術かといった2者択一ではなく、その時の患者さんにとっての最適な手術と考えています。したがいまして、安全で質の高い大腸手術を実施することが第一であり、必要な場合は、躊躇せず開腹手術に移行しています。この際も、例えば下部直腸癌例で肛門側腸管切離が困難な場合であれば、中枢側リンパ節郭清・血管処理や必要に応じて左結腸曲などの腸管授動を腹腔鏡下に行って、通常の開腹手術よりも小さな切開創(必要最小限の開腹創)で的確な肛門側腸管切離が行えるように配慮しています。

私どもは、綿密な術前シミュレーションのもとに極めて多数の手術を行い、一例一例反省と工夫を繰り返して安全性と手術の質の向上を重ねてきました。したがいまして、開腹移行が必要となった場合も、手術時間の延長や偶発症を避けて適切なタイミングで従来の開腹手術以下の必要最小限の開腹創でその時の患者さんにとって最適な手術を行っています。

ところで、腹腔鏡下手術は切開創を小さくすることだけにこだわった小開腹手術とは根本的に異なるということにも注意していただく必要があります。といいますのは、最近では術前画像診断能が向上したために、術中の腹腔内検索が軽んじられる傾向があります。とくに、肝表面や腹膜の小さな転移巣などは、術前画像診断で見逃されることもあります。私どもの腹腔鏡下手術では、腹腔鏡の近接視・拡大視効果を活かし、肝臓では外側区域の背面も含めた肝表面や腹膜では腸間膜面も含めて十分に視診を行い、疑わしい場合には、腹腔鏡下超音波検査や術中生検なども適宜利用してチェックします。また、開腹移行する場合も、腹腔内の状態を十分把握しておき、腹腔鏡下手術のメリットを残しつつ必要最小限の開腹創からの的確な手術に繋げるので、切開創を小さくすることだけにこだわって腹腔内の検索や操作が中途半端になる小開腹手術などとは根本的に異なるわけです。

また、術前もしくは術中に肝臓に転移が見つかって同時切除の方が良いと判断した場合には、当科の肝臓外科グループとチームを組んで手術を行います。当科の肝臓外科グループは、大腸がんなどからの転移性肝がんに対する肝切除術はもとより、肝硬変からの原発性肝臓がんに対する肝切除など難易度の高い肝臓手術の経験も豊富で良好な成績を残しており、私ども大腸外科チームも全幅の信頼のもとに一緒に手術を行っています。とくに、当科の肝臓外科グループは術後の肝転移再発に対しても60%近い完全切除率で良好な成績を誇っています。

一方で、膀胱へ広範囲に浸潤した高度進行直腸がんに対しては当院の腎泌尿器外科とチームを組んで小腸による新膀胱を尿道とつなぎ尿路系のストーマも避ける手術を行ったりもしています。とくに、高度に進行した直腸がんでは、がんが膀胱や子宮などの他の臓器に及ぶことも少なくありませんが、当院の腎泌尿器外科や婦人科・腫瘍科は心強いパートナーです。すなわち、診療科の枠を越えたチーム医療を背景に、数多くの困難な手術を重ねてきた私どもの実績と技術力も高い評価を得ています。

切除困難な高度進行大腸癌に対しては化学療法センター(腫瘍内科)のバックアップのもとに化学療法(抗がん剤治療)を先行して手術で癌を取りきる確率を上げています。さらに、局所高度進行直腸癌(骨盤内の大きな直腸癌)に対して放射線科のバックアップのもとで放射線化学療法を先行して腫瘍や転移リンパ節を小さくし、周囲への癌浸潤を抑えられれば、その後にできるだけ癌を残さずに取りきりつつ、肛門や膀胱などはできるだけ残す質の高い手術を積極的に行うなど、他科とも緊密に連携して最適な治療を心がけています。

最近は、術後難治性骨盤内炎や晩期肛門機能低下の回避のため、下部直腸進行癌への術前放射線照射の併用はできるだけ控えて、下部直腸高度進行癌にも術前化学療法(抗がん剤治療)を主に適用しています。

局所高度進行直腸癌に対する術前放射線抗癌剤治療

ただし、術前化学療法(抗がん剤治療)のみで効果が乏しい場合には、個々の患者さんの状況を見極めた上で、放射線療法を併用して腫瘍の縮小を図って根治性と肛門温存を両立させるなど、さらなる個別化を図っています。
直腸は狭い骨盤内にあって周囲を神経や血管で囲まれているため、直腸がん手術においては外科医の智慧と技量が極限まで問われるのです。

なお、私どもは、開腹手術においても、とくに骨盤内操作や経肛門アプローチでは、腹腔鏡下手術で会得した拡大視効果を活かすべく、光源付きの拡大ルーペを愛用しています(写真1)。

大腸がんのなかでも直腸がんの手術では、排尿・性機能障害と永久人工肛門が大きな問題となります。当科では直腸がんに対しては、排尿・性機能障害を避ける「自律神経温存術」と永久人工肛門を避ける「肛門温存術」を基本としています。 

腹腔鏡の近接視・拡大視効果はとくに骨盤内の自律神経温存に関しても極めて有用で、開腹手術では見えない骨盤深部まで近接して前述した光源付き拡大ルーペ以上によく見えますので脳神経外科などで顕微鏡下に行われているマイクロサージェリーの領域に近い感覚で繊細な手術が行えます(写真2)。

腹腔鏡の近接視・拡大視効果は直腸がん手術における骨盤内自律神経温存(排尿・性機能温存)に関しても極めて有用です。

また、「肛門温存術」に関しては、最近では、非常に肛門に近くて従来なら永久人工肛門となっていた超低位の直腸がんに対しても肛門縁から2〜3cmほど距離があって一定の条件を充たせば、永久人工肛門を極力避けて自分の肛門を残す超低位直腸切除術(反転法や括約筋間直腸切除術(ISR))を積極的に行っています。とくに、括約筋間直腸切除術(ISR)は、「究極の肛門温存術」とも言われています(図4)。これまでに同手術を200人に施行しましたが、この手術においても190人には腹腔鏡下手術も取り入れて、機能温存に低侵襲性も附加した「究極の低侵襲肛門機能温存術」を行っており、トップクラスの実績です。当科では、これらの超低位直腸切除術の積極的な導入により、直腸がんの肛門温存率は92%と、非常に多くの患者さんのご希望に添えるようになり喜んでいただいています。

女性に比べて骨盤の狭い男性、内臓脂肪の多い肥満患者さんの直腸癌手術で吻合部が肛門に近いと術後縫合不全の危険性が高くなります。また、高齢者では、術後縫合不全からの腹膜炎は時に致命的な合併症となり得ます。
このため、上記の場合、術後縫合不全の重篤化回避目的で一時的人工肛門(ストーマ)を併設することが多くなります。
一方でストーマ造設例では、脱水症などのストーマトラブルも問題となります。また、肥満患者さんではストーマ造設が困難なこともあります。
私どもは、腹腔鏡下ISRにおいてpull-through法にて結腸を肛門外へ引き出して初回手術では吻合せず、1週間後に2期的吻合を行うことが多くなっています。この方法により、縫合不全による腹膜炎を回避し、一時的ストーマもほとんど不要となっています。また、排便機能は徐々に回復してくるため、「生まれ変わる手術」という意味を込めて”Reborn手術“と呼んでいます。

Reborn surgery

ただし、直腸がんの進行度、術前後の肛門機能や患者さんの活動力などによっては直腸切断術(永久人工肛門)の方が適切な場合もありますので、個々のケースで患者さんやご家族と相談の上で方針を決定しています。また、肛門温存術を行った後でも、ここの患者さんの生活状況の中で肛門機能が悪くてお困りになる場合には、その時点で人工肛門を付ける手術も行っています。

ところで、前述した超低位直腸切除術では、術後の縫合不全や頻便によるトラブルを予防して良好な肛門機能を温存するため、一般的には一時的な人工肛門を付けることも少なくありません。これは、再発の有無や肛門機能を評価して問題なければ、3〜6ヶ月後位をめどに一時的人工肛門を戻す手術して自分の肛門からの自然排便が可能となります。ただし、一時的人工肛門を付けている期間の人工肛門の管理(ストーマケア)のサポートが重要です。

また、永久人工肛門となった患者さんでは、定期的なサポートがさらに重要となります。

当院では、外来担当医とともに日本看護協会で認定された皮膚・排泄ケア認定看護師が中心となってストーマケアの適切なサポートを行うべくストーマ外来(月曜日午前)も開設しています。詳しくは、当院消化器外科外来(内線2341)までお問い合わせください。

以上のような経緯により、北摂地域や近畿圏のみならず、中四国、九州・沖縄や関東圏、東北・北海道や海外などの遠方からも直接受診や、ご紹介いただく患者さんが年毎に急増してきました。当院では、2005年10月からの総合棟病院7号館4階の74病棟(内視鏡外科センター(写真3))に加え、2016年4月から中央手術棟5階に新消化器外科C5病棟(写真4)が開設され、より多くの患者さんに専門的で快適なケアが行えるようになりました。これは全国でも異例の快挙と言えます。内視鏡外科専用の手術室を持つ病院はいくつも出てきていますが、2005年当初より内視鏡外科病棟をもつ病院は聞いたことがなく、これが大学病院で創始されたことの意義はきわめて大きいのです。全国でトップクラスの手術件数を誇る当院においてこそ内視鏡外科センターに加えて新消化器外科病棟が新設されたわけです。

なお、総合棟病院7号館の10階には、さらに快適で癒しの時空にも配慮した特別室病棟(7A病棟)があります(写真5)。
室料差額料金の概要は、病院ホームページでもご参照いただけますが、詳細につきましては当院医事課入院係(内線2215)にてご確認ください。

以上のように、大阪医科大学附属病院における大腸がん手術では、大腸外科治療を専門とする私ども大腸外科チーム(下部消化管外科班)が主体となり、関連各科ともスムーズな連携体制をもって、安全性、根治性と低侵襲性に加えて術後の生活の質(QOL)も高められる最高のチーム医療を行うことをモットーに、患者さんとともにお一人おひとりの患者さんに最適な治療を追求しています。

 

手術適応のある良性腸疾患と身体にやさしい外科治療の実際

良性疾患では、炎症の反復・膿瘍形成・狭窄を来した大腸憩室炎、家族性大腸腺腫症および内科的治療抵抗性の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などが手術対象となります(図5、図6)。この際にも減圧不能の腸閉塞や穿孔による重度の汎発性腹膜炎などを合併していなければ、腹腔鏡下手術の良い適応です。

内科的治療抵抗性で手術が必要となるような潰瘍性大腸炎には、大腸全摘除術が基本術式となります。なお、患者さんの全身状態や病変の範囲と程度などに応じて、1期手術か分割手術(2期分割、3期分割)にするか、肛門管吻合(IACA)か肛門吻合(IAA)にするかなどをお話しして決めます。
さらに、最近では、潰瘍性大腸炎の長期経過患者さんの中に大腸癌を併発して紹介受診されるケースも増えてきていますが、私どもは炎症性腸疾患と大腸癌の両方の手術実績か豊富ですので、お一人おひとりに最適な治療を選択できます。

内科的治療抵抗性で手術が必要となるようなクローン病には、腸切除が必要なことも多いのですが、病変の範囲と程度などに応じて、狭窄拡張術を併用してできるだけ短腸症候群(小腸が短くなりすぎて十分な栄養を吸収できなくなること)にならないように配慮しています。

潰瘍性大腸炎、クローン病や家族性大腸腺腫症は若年層に多いため、傷が小さく目立たないという美容面や早期の社会復帰の利点に加えて、長期間の経過中に再燃や他の腹部疾患の併発で再手術の場合も、癒着が少ない腹腔鏡下手術の効果が活かされます。

私どもは、大腸がんのみならず、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、大腸線腫症、大腸憩室炎、直腸脱などの良性腸疾患の手術も専門にしており、とくに、これらを身体にやさしい小さな傷で行う腹腔鏡下大腸手術のスペシャリストとして国内外で最高の評価を得ています。

さらなる最先端医療の最適化の実際

当院では、3D腹腔鏡や特殊なホルダーなどを活用し、3次元モニターを活用したさらに精緻な操作と腹腔鏡下の触覚能も高めながら、肛門機能温存に加えて性機能や排尿機能を司る神経の温存をさらに繊細かつ的確に行う次世代の腹腔鏡下直腸がん手術を積極的に行っています。2015年からは、経肛門的微細手術(TAMIS)にも3D腹腔鏡を導入して3D-TAMISとして活用しています。

3D腹腔鏡

2016年にオープンした新中央手術棟にて3次元腹腔鏡下手術に経肛門的微細手術を融合させて究極の肛門温存手術を最新の機器・器具と併せて大阪医科大学病院システム(OMC OR system)として最適化させています。

さらに、私どもは、最先端の手術手技と機器を「My Robot System」として応用しています。

本年度から適応を選んで直腸がんに対するロボット支援手術も「My Robot System」の一貫として活用します。

なお、結腸がんに対しても、早期がんや小さな進行がんには手術創(傷)のわかりにくい単孔式手術(下写真)を、結腸進行がんには根治性を高めながら切除から安全な吻合までを腹腔鏡下に行う完全腹腔鏡下手術を個別化して行っています。さらに、腹部に1.5cm以上の傷をつけない無小切開創手術(NOSE手術)も導入しました。

単孔式術後(臍部の小さな傷ひとつで済み傷跡がほとんどわからない)

当科 大腸外科チーム(下部消化管外科班)の取り組みについて

専門領域の知識と技術を常に高めることはもちろんとして、ご病気を持った患者さんをトータルにケアすることが最も重要と考えています。

とくに大学病院には心臓、肺、肝臓、腎臓や脳などに併存疾患(持病)をもった患者さんが多く、これからの病院機能分担を考えれば、大学病院では重症併存疾患を持った大腸疾患患者さんの割合がさらに高率になっていくはずです。

一方、外科治療においては迅速性も重要ですから、併存疾患のケアに必要な専門科チームと効率の良い連携をはかりつつ必要最小限の検査で的確な診断、適切な術前準備と患者さんやご家族が理解して選択しやすいような明確な治療(手術)の情報を提供しなければなりません。当科では、大腸外科治療を専門とする大腸外科チーム(下部消化管外科班)が、関連各科とのスムーズな連携のもとに、根治性と低侵襲性に加えて術後の生活の質(QOL)も高められる最高のチーム医療を行って、可能な限り個々の患者さんのご希望に応えることをモットーにしています。

表3に大腸がんを始めとする大腸疾患で手術が必要と診断されて紹介いただいた患者さんの外来受診から入院・手術・退院および退院後のケアまでの流れを示しています。

すなわち、私どもは、紹介医の検査データなどをもとに、原疾患・併存疾患・服用薬剤などをチェックしたうえで、手術の必要性を説明してインフォームド・コンセントが確認できれば、初回受診日に入院・手術日を予約し、ご本人・ご家族と相談の上で予定退院日まで設定しています。この内容は独自の外来説明用紙に記載をして患者さんにお渡ししますので説明内容を理解しやすく、その内容や予定の記録にもなります。また、この用紙は、同時に入院予定の病棟にも送られますので、病棟や多職種チーム医療の入院前チェックとしても活用されています。

私ども大腸外科チームは、放射線科の協力のもとに、主な術前精査(大腸内視鏡検査→3D-CT検査)として一日で済む検査枠を確保しています(表4)。また、術前精査を迅速かつ的確に行ってもらえる連携病院とのネットワークもさらに密にして、初回受診から1〜2週間以内に術前精査を完了するようにしています。

さらに、麻酔科・関連各科や看護部全体(外来・病棟・手術室など)の積極的な協力のもとに、併存疾患のコントロールが良好で、全身状態などに問題がなければ、初回受診から1〜3週間以内に手術を行えるようにしています。

なお、表3に示しますように、入院前チェックから退院にいたるまで、主治医・担当医のみならず、看護師、薬剤師、管理栄養士を中心とした多職種チーム医療をシステム化して実践しています。さらに、個々の患者さんの併存疾患や全身状態などに合わせ、それらの専門医のサポートも加えて個別化(オーダーメイドの多職種チーム医療)も図っています。

 

私ども大腸外科チーム(下部消化管外科班)は、治療(手術)前に治療(手術)の情報を患者さんやご家族に理解していただくことも極めて重要なことと考えています。

すなわち、私どもの術前説明では、個々の患者さんにとって、とくに注意しておくべき術中偶発症・術後合併症や術前・術後追加治療(抗がん剤治療や放射線療法など)も含め、術中・術後に予想される一連の経過と主な偶発症・合併症の予防策・対策法をお話しして、これまでの経験や最新の技術と知見をもとに全力で治療(手術)することをご理解いただき、安心感と信頼感を持っていただけるようにしています。なお、術前・術中・術後を通して迅速かつ効率の良い院内連携を図って的確なバックアップを受けられる体制維持にも力を注いでいます。したがいまして、万一、偶発症・合併症や再発などが起こった場合でも、患者さんやご家族とともにそれらに前向きに対応できると考えています。

とくに、私どもでは、医師のみならず、看護師、薬剤師、管理栄養士などからなる多職種チーム医療のシステムを構築して、随時カンファレンスを行っています(写真6)。

多職種チーム医療カンファレンスにおいては、クリニカルパスのアップデートや薬剤指導、術後の食事指導など医療サイドのシステム化とともに、個々の患者さん別に注意すべき合併症の先取りを加えた日めくりパスの作成、併存疾患の管理のための薬剤再開時期の確認や栄養管理上の注意点の把握など患者データを個別化し、合併症の予防と併存疾患のコントロールを的確に行って安心して予定通り退院していただけるように、多職種チーム医療を最高のチーム医療へと進化させることをモットーにしています。とくに、多職種チーム医療によって、患者さんやご家族からは、病院全体から診てもらっているという安心感と満足感を得られています。

さらに、高度進行大腸がんの術前・術後の抗がん剤治療 / 放射線治療や再発に対する抗がん剤治療 / 放射線治療におきましても当院の化学療法センター(腫瘍内科)放射線科の専門チームと連携して適切な治療を効果的に受けていただくことで、長期生存が得られるケースが増えています。

このような場合にも、私ども大腸外科チーム(下部消化管外科班)は、当科と他科での治療経過を把握してポイント毎に患者さんが治療経過を理解しやすいようにお話しし、ライトハウス(灯台)となることを目指しています。

今や、医療を受ける側から選ぶ側になった当事者である患者さんとご家族は、「より充実したチーム医療のもとで最適な専門治療を安心して受けられる病院」を求められていると実感しています。(写真7)

そのようなご要望にお応えすべく、私どもも大腸疾患患者さんお一人おひとりに垣根のないオーダーメイドの医療チームで最適な治療を行って喜んでいただくとともに、「このたびの入院治療をこれからの健康維持のための大切な経験」として活かしていただけるように、そして、大阪医科大学附属病院の理念である「安全で質の高い医療を提供する」大学病院として、さらに大きく社会に貢献できるように全力を尽くしていきたいと考えています。

とくに私どもにとっては、「ここで手術を受けて良かった」と元気に退院されていく姿が何よりの励みとなっています。

2016年に20室の最先端手術室からなる新中央手術棟が完成し、本年度よりチーム力のアップとともに稼働力もさらに向上してきました。これにより、安全、安心で最良の手術を今後さらに多くの患者さんに迅速かつ的確に施行できます。

最先端手術室からなる新手術棟

患者さんへのアドバイス(予防策、受診にあたっての注意や対応策など)

  • 大腸がん治療におきましても、完璧な予防法や治療法がない現在、早期発見・早期治療が一番と考えます。とくに症状がなくても、定期的に大腸検査(できるだけ大腸内視鏡検査)を受けられることをお勧めします。また、検診(便潜血検査)で一回でも陽性ならば、必ず大腸内視鏡での精密検査を受けましょう。
  • 大阪医科大学附属病院では消化器内視鏡センターにおいて消化器外科も消化器内科と連携して大腸内視鏡検査や内視鏡的切除(ポリペクトミー/EMR/ESD)を行っており、消化器外科を受診されても内視鏡的切除が適切な患者さんには、手術よりも内視鏡的切除を優先します。
  • 腹腔鏡下大腸手術などの専門病棟として内視鏡外科センター(74病棟)や新消化器外科病棟(C5病棟)が稼働していますのでより安心で快適なケアが受けられます。さらに快適で癒しの時空にも配慮した特別室病棟(7A病棟)もありますのでご利用下さい。なお、室料差額料金は、病院ホームページでもご参照いただけますが、詳細は当院医事課入院係(内線2215)にてご確認ください。
  • 大腸がんをはじめ、大腸疾患の手術などでお悩みの患者さんがおられましたら、消化器外科初診外来へ受診、もしくは、ご紹介ください。(受付=午前8時半〜11時)   
    各曜日の担当医は下記のごとくで、医師の指名も可能です。
      奥田 準二 :月曜日午前(±水曜日午後)
      田中慶太朗 :火曜日午前
      山本 誠士 :木曜日午前
      鱒渕 真介 :金曜日午前
  • おかかりの医療機関(クリニック、診療所や病院など)より当院「医療連携室」(TEL:072-684-6338、FAX:072-684-6339)へ連絡のうえで、受診予約してもらってください。
    指名予約可能ですので、おかかりの先生やお申し込みの医療機関連携室を介して、もしくは直接に、当院医療連携室担当者に遠慮なく仰ってください。
  • おかかりの医療機関よりの診療情報提供書(紹介状)はあったほうがよいです。ないと、選定療養費(5,400円、消費税込み)が加算される他、臨時休診や待ち時間が非常に長くなることがあります。
  • セカンドオピニオンのご相談や医療機関よりのご紹介に「医療連携室」[TEL:(072) 684-6338、 FAX: (072) 684-6339]をご利用ください。また、当ホームページの外来案内ならびに医療連携室の項もご参照ください。
  • 当科での治療後は、患者さんとご紹介いただいた先生方に経過観察表をお渡しして、患者さんの自己管理とご紹介医の診療(院外連携)にも役立つように配慮しています。とくに最近では、退院後の経過観察はご紹介医や地元のかかりつけ医の施設との医療連携をメインにするように配慮しています。

セカンドオピニオンをご希望の方へ

おかかりの医療機関(診療所や病院など)の検査データと診療情報提供書(紹介状)を用意し、当院医療相談部「医療連携室」[TEL:(072) 684-6338]に電話をかけて奥田準二を指名・予約してください。一時間で32,400円(消費税込み、保険対象外)。

なお、完全予約制ですので、本学の「セカンドオピニオン外来のご案内」もご参照ください。

私が目指す、さらに安心で質の高い治療と医療ネットワークの充実

私(奥田準二)は、大阪医科大学附属病院 がん医療総合センターのみならず、当院消化器外科での外来診察(奥田準二の初診外来は月曜日午前のみ、指名可)や入院後の手術などの診療も一層向上させ、さらに安心で質の高い治療を目指しています。

また、セカンドオピニオン外来では、私どもとの医療ネットワークによる診断、治療や術後フォローアップの連携の実績をもとに、必要に応じて全国各地域で推奨できる病院や医師のご紹介もしています。

著書について

2002年9月に永井書店より拙著「腹腔鏡下大腸手術の最前線―大腸疾患に対する外科治療の新戦略」の初版が刊行されました。その4年後の2006年8月には改訂第2版「腹腔鏡下大腸手術の最前線U ―大腸疾患に対する外科治療の新戦略」が刊行されました。また、2010年7月には中外医学社より「奥田準二のエキスパートテクニック 1.腹腔鏡下低位前方切除術」、「奥田準二のエキスパートテクニック 2.腹腔鏡下結腸右半切除術」と「腹腔鏡下大腸手術の基本手技 腹腔鏡下S状結腸切除/前方切除―技術認定取得者からの提言」の3冊が刊行されました。2011年7月には永井書店より「Team Jが贈る最先端の内視鏡下大腸手術 -単孔式からロボット手術まで-」が刊行されました。さらに、2013年4月には永井書店より「両極からみた次世代の腹腔鏡下直腸癌手術」が刊行されました。いずれも、紀伊國屋やジュンク堂など全国有名書店でも購入できます。

『腹腔鏡下大腸手術の最前線U-大腸疾患に対する外科治療の新戦略』
 監 修:谷川 允彦
 編 著:奥田 準二
 永井書店

『腹腔鏡下大腸手術の基本手技 腹腔鏡下S状結腸切除/前方切除―技術認定取得者からの提言 [DVD添付] 』
 編集:奥田 準二
 中外医学社 

『奥田準二のエキスパートテクニック 1.腹腔鏡下低位前方切除術 [DVD添付] 』
『奥田準二のエキスパートテクニック 2.腹腔鏡下結腸右半切除術 [DVD添付] 』

 監 修:谷川 允彦
 編 著:奥田 準二
 中外医学社

『Team Jが贈る最先端の内視鏡下大腸手術 -単孔式からロボット手術まで- [DVD添付] 』
 編 著:奥田 準二
 永井書店

『両極からみた次世代の腹腔鏡下直腸癌手術 [DVD添付] 』
編 著:奥田 準二
永井書店

お問い合わせ

医療連携室   (TEL:(072) 684-6338、FAX:(072) 684-6339)
消化器外科外来 (TEL: (072)683-1221、内線:2341)
E-mail(奥田): sur017@osaka-med.ac.jp

所在地と交通

大阪―京都の中間点となる高槻市にあり、阪急・JRが便利です。
阪急「高槻市」駅より徒歩3分、JR「高槻」駅より徒歩8分
〒569-8686 大阪府高槻市大学町2−7 
大阪医科大学附属病院 一般・消化器外科
(TEL: (072)683-1221、内線:2341(外来)/2361(一般・消化器外科))

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